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組織の「10人の壁」とは?社員10人で起こる6つの問題と乗り越え方

「社員が増えたのに、なぜか社長である自分が一番忙しくなっている」
「5人くらいの頃は何も言わなくても伝わっていたのに、最近は認識のズレが増えた」
「仕事を任せたいのに、結局すべて自分に確認が戻ってくる」
社員が10人前後まで増えた会社では、こうした問題が起こり始めることがあります。一般に「10人の壁」と呼ばれる組織課題です。
ただし、社員が10人になった瞬間に問題が起こるわけではありません。
10人の壁の本質は、社員数ではなく、社長が一人ひとりを直接見て、指示を出し、仕事を教え、最後の意思決定までする経営方法が限界を迎えることにあります。
そのため10人前後からは、社長自身がさらに頑張るのではなく、仕事・判断・情報を少しずつ組織へ移していく必要があります。
この記事では、10人の壁で起こる症状や原因、自社が壁にぶつかっているかを確認するチェック項目、具体的な乗り越え方まで解説します。
目次
組織の「10人の壁」とは?
10人の壁とは、社員数が10人前後まで増えた段階で、創業初期に機能していた組織運営の方法では会社が回りにくくなる現象を指します。
社員が3〜5人程度であれば、社長が全員と毎日話し、仕事内容を把握し、その場で指示を出すこともできます。
明確なマニュアルがなくても、
「いつものやり方で」
「社長ならこう判断する」
という共通認識で仕事が進みます。
しかし、社員が増えるほど社長一人が持つ情報量・意思決定量・マネジメント量も増えます。
そこで必要になるのが、社長個人に頼る経営から、役割やルール、仕組みを使って動く組織への転換です。
10人は絶対的な人数ではない
「社員10人になれば必ず壁が来る」という科学的・法則的な境界があるわけではありません。
7人で社長が限界になる会社もあれば、15人でも比較的スムーズに運営できる会社もあります。
業種、仕事内容、社員の経験、拠点数、社長が現場へどの程度関わっているかなどによって変わるためです。
そのため、
「現在9人だからまだ大丈夫」
と人数だけで判断するのではなく、実際に組織でどんな症状が起きているかを見る必要があります。
10人前後から「社長中心のチーム」では回りにくくなる
創業期の会社では、
社長=営業責任者
社長=採用責任者
社長=教育担当
社長=最終判断者
という状態も珍しくありません。
初期段階では、この方がスピードが出ます。
しかし社員数と事業量が増えても同じ構造を続けると、社長がボトルネックになります。
中小企業庁の調査でも、従業員規模が大きくなるほど経営者からの権限委譲が進む傾向が確認されています。
会社を成長させるには、「社長がもっと処理する」のではなく、「社長以外でも判断・実行できる範囲を増やす」必要があります。
10人の壁にぶつかった組織で起こる6つの症状
10人の壁は人数ではなく症状で判断します。
次のような問題が増えてきたら、組織運営を変えるタイミングかもしれません。
社長が一番忙しくなっている
社員を採用したはずなのに、社長の仕事が減るどころか増えている。
これは10人の壁でよく起こる状態です。
社員が増えれば、
・質問への回答
・仕事内容の確認
・トラブル対応
・採用
・面談
・最終判断
も増えます。
さらに社長自身が営業や制作、現場業務などのプレイヤーを続けていれば、時間はいくらあっても足りません。
問題は、社長の処理速度ではありません。
「社長がやらなくてもいい仕事まで社長に集まる構造」にあります。
社員が社長の指示待ちになっている
社長自身は、
「もっと自分で考えて動いてほしい」
と思っている。
しかし社員側からすると、
「勝手に決めて怒られるくらいなら社長に聞こう」
という状態になっていることがあります。
例えば、
「このお客様には値引きしていいか」
「このクレームにはどこまで対応するか」
「この施策を始めてよいか」
について毎回社長確認が必要なら、自律的には動けません。
「自分で考えて」と伝えるだけでなく、どこまで自分で決めてよいのかを明確にする必要があります。
「言わなくても分かる」が通じない
創業メンバーは、会社ができた背景や社長の考えをよく知っています。
長く一緒に働いているため、
「うちならこうするよね」
が通じます。
一方、新しく入った社員にはその前提がありません。
そこで、
「こんなことまで説明しないといけないのか」
と感じ始めたら、暗黙知を言語化するタイミングです。
新人が理解できないことを「察する力がない」で済ませるのではなく、会社側が説明できる仕組みに変える必要があります。
社員ごとに仕事の品質が違う
創業メンバーならできる。
社長ならできる。
しかし新人がやるとうまくいかない。
この差が大きい場合、仕事そのものが属人化しています。
例えば営業なら、
「どんな質問をするのか」
「どのタイミングで提案するのか」
「どこまで値引きできるのか」
が特定の人の頭の中にしかありません。
10人前後からは、「できる人を増やす」だけではなく、できる人のやり方を他の社員も再現できる状態へ変えることが必要です。
誰が何を決めるのか分からない
少人数のときは、全員で何でもやることにメリットがあります。
一方で社員が増えると、
「誰が担当なのか」
「最終責任者は誰なのか」
「誰が決めてよいのか」
が曖昧な仕事が増えます。
ここでいきなり「営業部」「管理部」といった立派な組織図を作る必要はありません。
まず、
「営業方針は誰が決める」
「採用は誰が担当する」
「顧客トラブルの最終判断は誰がする」
という責任領域を整理することから始めます。
評価や給与の決め方を説明しづらくなる
5人程度なら、社長が全員の日々の働きを把握したうえで、
「今年はよく頑張ってくれたから昇給しよう」
という判断でも一定の納得感を保てる場合があります。
しかし社員が増えると、
「なぜAさんは評価されたのか」
「自分は何を頑張れば給与が上がるのか」
という疑問が出てきます。
10人になった瞬間に複雑な人事評価制度が必要になるわけではありません。
ただし、
「この役割には何を期待するのか」
「どんな成果・行動を評価するのか」
程度は徐々に言語化した方がよいでしょう。
なぜ社員10人前後で組織に壁ができるのか
症状はさまざまですが、原因を整理すると4つあります。
社長がプレイヤーと経営者を兼務している
創業期の社長は、自分で売ったり、作ったり、顧客対応したりすることが会社の成長につながります。
しかし社員が増えれば、社長には別の仕事が増えます。
誰を採用するか。
どの事業へ投資するか。
誰に何を任せるか。
半年後にどんな組織を作るか。
社長が現場業務だけを続けると、この「未来を作る仕事」の時間がなくなります。
10人の壁は、社長自身の役割をプレイヤーから経営者へ変えるタイミングでもあります。
仕事が人の頭の中にしかない
「○○さんしか分からない」
という仕事が増えていれば、組織拡大の妨げになります。
属人化した業務は、その社員が休んだり退職したりしたときに止まります。
また新人が入るたびに、ゼロから口頭で教えなければなりません。
すべての業務を分厚いマニュアルにする必要はありません。
まずは頻繁に発生する業務や、ミスが起きると影響が大きい業務から手順を残します。
役割と権限が決まっていない
「責任者にはしたけれど、何を決めていいのかは決めていない」
という状態もよくあります。
これでは役職を作っても、
部下
↓
リーダー
↓
社長
と確認経路が一つ増えるだけです。
役割を与えるなら、
「何に責任を持つのか」
「どこまで自分で決められるのか」
までセットで決める必要があります。
創業メンバーと新入社員の前提が違う
新しく入った社員は、会社の創業時を知りません。
そのため、
「なぜこの仕事をしているのか」
「顧客対応で何を優先するのか」
「この会社では何を良い行動と考えるのか」
を言葉にして伝える必要があります。
社員が増えるほど、社長自身が一人ひとりへ価値観を伝える方法には限界があります。
経営理念やMVV、行動指針などを整理する意味もここにあります。
あなたの会社は10人の壁?10項目でチェック
次の項目を確認してください。
1. 社員が増えても社長の残業時間が減っていない
2. 細かな判断まで社員から社長へ確認が来る
3. 社長が1日休むと決まらないことが増える
4. 「○○さんしか分からない仕事」が複数ある
5. 新入社員へ毎回同じ説明を口頭でしている
6. 誰が最終責任者なのか曖昧な業務がある
7. リーダーはいるが、実質的な決定権がない
8. 創業メンバーと新入社員で仕事の考え方が違う
9. 社員から評価・給与の基準について聞かれることが増えた
10. 社長自身が半年後・1年後について考える時間を取れていない
「何個以上なら10人の壁」という絶対的な基準はありません。
重要なのは、どこに問題が集中しているかです。
1.〜3.が多ければ権限委譲。
4.〜5.なら業務標準化。
6.〜7.なら役割・組織設計。
8.なら理念・オンボーディング。
9.なら評価基準。
10.なら社長自身の役割変更。
というように、症状から施策を考えます。
10人の壁を越えるために整える5つの仕組み
1|会社の方向性と判断基準を言語化する
最初に整理したいのは、
「この会社はどこへ向かっているのか」
「仕事で迷ったとき、何を大切に判断するのか」
です。
社員5人なら、社長本人が毎日伝えることで共有できます。
10人、20人と増えていけば、その方法だけでは追いつきません。
経営理念やMission・Vision・Valueを作る場合も、格好いい言葉を作ることより、社員が判断するときに使える状態まで具体化することが重要です。
2|社長しかできない仕事と任せる仕事を分ける
いきなり「明日から全部任せる」のではありません。
まず社長が現在行っている仕事を書き出します。
そのうえで、
A:社長しかできない
B:今は社長だが将来任せる
C:すぐ任せられる
の3つに分類します。
例えば、
会社の経営方針を決める → A
重要顧客との商談 → B
見積書の作成 → C
という具合です。
最初にCを減らし、その次にBを任せられる人材を育成していきます。
3|繰り返す業務を標準化する
社員が増えたときに強い会社は、「優秀な人がいる会社」だけではありません。
普通の社員でも一定品質の仕事ができる会社です。
そこで、
・営業フロー
・顧客対応
・見積もり
・受発注
・入社手続き
・問い合わせ対応
など、繰り返し発生する業務から標準化します。
大阪総合人財経営の記事でも、社員増加後の組織では業務の可視化・標準化と、マネジメント体制の見直しを並行して進めることが提案されています。
4|役割・責任・権限を決める
役職名より先に、
「何を任せたいのか」
を決めます。
例えば営業リーダーなら、
役割:営業チームの目標達成
責任:メンバーの進捗管理・育成
権限:○%までの値引き、案件配分
というように整理します。
「営業部長」という肩書だけ付けても、本人が何を決めてよいか分からなければ組織は変わりません。
5|No.2・リーダーを育てる
10人前後になると、社長自身の仕事を減らすためにも「自分以外に判断できる人」を育てる必要があります。
ただし、
「一番営業成績がいいから」
だけで管理職にするのは注意が必要です。
プレイヤーとして成果を出す力と、人を育てたり組織を判断したりする力は別だからです。
最初から完璧なNo.2を探すより、
「採用」
「営業」
「教育」
「顧客対応」
など一部の責任領域から渡し、意思決定経験を積ませていく方が現実的です。
10人規模で評価制度は必要?
社員10人になったら、必ず本格的な人事評価制度を導入しなければならないわけではありません。
この段階で、評価項目が何十個もある複雑な制度を作ると、運用負担の方が大きくなる場合があります。
まず決めたいのは、
・それぞれの役割に何を求めるのか
・どんな成果を評価するのか
・どんな行動を会社として評価するのか
・給与や昇格を何を基準に判断するのか
です。
例えば、
営業担当:
売上+商談品質+顧客対応
リーダー:
チーム成果+育成+業務改善
という程度からでも構いません。
社員から見て、
「何を期待されているか」
「何を頑張れば評価されるか」
が分かる状態を最初に作ります。
その後、社員数や役職が増えて評価者が複数になった段階で、人事評価制度を本格化させる方法もあります。
社員10人になったら就業規則も確認する
「組織の10人の壁」とは別に、法律上も10人は一つの基準になります。
労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長へ届け出ることが求められています。
ここでいう労働者には、正社員だけでなく、パートタイム労働者や臨時のアルバイトなども含まれます。
また、「会社全体で10人」ではなく、原則として「事業場」単位で確認します。
就業規則を作成・変更する際には、労働者代表等の意見を聴き、意見書を添付して届け出る必要があります。
社員が10人前後になったら、組織体制だけではなく労務管理についても一度確認しておきましょう。
何から始める?10人の壁を越える5つの優先順位
10人の壁を感じたからといって、
組織図を作る。
評価制度を作る。
理念を作る。
マニュアルを作る。
管理職研修をする。
これらすべてを同時に行う必要はありません。
おすすめする順番は次の通りです。
1. 社長しかやる必要がない仕事を決める
まず、社長自身の仕事を棚卸しします。
2. 社長以外へ渡す業務を決める
誰に、何を、どこまで任せるのかを決めます。
3. 任せるために必要な基準を言語化する
業務手順・判断基準・理念など、社員が自分で判断するための材料を作ります。
4. 責任者を決め、権限も一緒に渡す
肩書ではなく責任領域を明確にします。
5. 評価・会議・育成を徐々に仕組み化する
社員数が増えても同じ方法で運営できるようにします。
10人の段階では、完璧な制度を完成させる必要はありません。
重要なのは、社長の頭の中にしかない会社運営を、少しずつ外へ出すことです。
10人の壁と30人の壁は何が違う?
10人の壁と30人の壁は似ていますが、中心となる課題が違います。
10人の壁は、
「社長一人で会社を動かす限界」
です。
そのため、
・業務標準化
・権限委譲
・役割分担
・No.2育成
・判断基準の言語化
が中心になります。
一方30人の壁では、すでに複数のチームやマネージャーが存在し始めます。
そこで問題になるのは、
「複数チームを一つの組織としてどう動かすか」
です。
そのため、
・マネージャー育成
・部署間連携
・MVV浸透
・評価制度
・オンボーディング
などの重要性がさらに高まります。
10人の段階で社長依存を減らしておけば、30人になったときの組織化も進めやすくなります。
まとめ|10人の壁は「社長が頑張る会社」から「みんなで回す会社」への転換点
10人の壁は、社員数が10人になった瞬間に発生するものではありません。
本当の壁は、
「社長自身が一番働けば会社が伸びる」
という創業期の成功パターンが、通用しにくくなることです。
社員が増えたら、社長自身がさらに頑張るのではなく、
仕事を渡す。
判断を渡す。
知識を渡す。
責任を渡す。
という変化が必要になります。
まずは、
「自分しかできないと思っている仕事のうち、本当に社長しかできないものは何か?」
を洗い出してみてください。
10人の壁を越える第一歩は、立派な人事制度や組織図を作ることではありません。
社長の頭と手の中にある仕事を、組織へ移し始めることです。
その変化ができれば、10人を超えた先でも「社長がいないと止まる会社」ではなく、「社員それぞれが役割を持って動ける組織」へ成長していけます。
