【人事担当者必見】病気休暇中の従業員、人事評価はどうする?公平性と配慮のバランス

「従業員が病気休暇を取得したけれど、人事評価はどうすればいいのだろう…」
このようなお悩みをお抱えの人事担当者や管理職の皆様、ご安心ください。
病気休暇を取得した従業員の評価は、単に業績が低かったからといって不当に下げるわけにはいきません。
法的な観点からの配慮も必要であり、一方で公平な評価制度を維持することも重要です。
本記事では、病気休暇と人事評価の関係性、評価期間中の従業員や復帰した従業員を公平かつ適切に評価するための具体的な方法、そして「不利益取扱いの禁止」といった法的な留意点まで、人事担当者や管理職の皆様が抱える疑問や不安を解消し、円滑な職場環境の維持・向上に貢献できるような、実践的な知識を分かりやすく解説します。
目次
病気休暇と人事評価の基本:なぜ悩むのか?
病気休暇が人事評価に与える影響の難しさ
従業員が病気休暇を取得した際、人事担当者や管理職の皆様は、その期間の評価をどのように扱うべきか頭を悩ませることが少なくありません。
特に、評価期間の大部分を病気休暇が占めた場合、通常の評価プロセスを適用することへの疑問が生じます。
この問題の難しさは、従業員の健康状態への配慮と、企業として公平な評価制度を維持することのバランスをどう取るかという点にあります。
病気休暇は、従業員が予期せぬ体調不良により業務を離れることを余儀なくされる状況であり、その期間を単純に「業務実績なし」として評価を下げてしまうと、従業員のモチベーション低下や職場復帰への意欲喪失につながりかねません。
一方で、病気休暇期間を評価対象から完全に除外したり、過度に配慮した評価を行ったりすれば、他の従業員との公平性が損なわれる可能性も出てきます。
このような複雑な背景が、病気休暇中の従業員の人事評価を難しくしているのです。
病気休暇中の従業員を評価する際の法的留意点
従業員が病気休暇を取得した際の人事評価においては、法的なリスクを回避し、従業員が安心して療養・復帰できる環境を整えることが重要です。
特に、労働者の権利保護の観点から、「不利益取扱いの禁止」について深く理解しておく必要があります。
「不利益取扱いの禁止」とは?
「不利益取扱いの禁止」とは、従業員が特定の権利を行使したことや、特定の事由に該当したことを理由として、企業がその従業員に対して不利益な取り扱いをしてはならないという法的原則を指します。
病気休暇の場合、従業員が病気のために休暇を取得したことを理由として、人事評価を不当に低くしたり、昇進・昇格の機会を奪ったりする行為がこれに該当しうると考えられます。
具体的には、以下のような行為が不利益取扱いに該当する可能性があります。
- 人事評価の減点: 病気休暇の取得期間が長かったことを直接的な理由として、評価項目に関わらず一律に評価を下げること。
- 賞与・昇給の抑制: 病気休暇を理由に、他の従業員と比較して不当に低い賞与額や昇給率を適用すること。
- 昇進・昇格の遅延・見送り: 病気休暇を取得したことで、本来であれば昇進・昇格の対象となるはずだった従業員を不当に除外すること。
- 配置転換・降格: 病気休暇からの復帰後、正当な理由なく不利益な配置転換を行ったり、降格させたりすること。
これらの行為は、従業員のモチベーション低下や企業への不信感につながるだけでなく、法的な訴訟リスクを招く可能性もあるため、十分な注意が必要です。
評価期間中の病気休暇取得者への対応
評価期間中に病気休暇を取得した従業員に対しては、法的なリスクを回避しつつ、公平かつ適切な評価を行うための具体的な対応が求められます。
単に「病気休暇だから評価できない」とするのではなく、以下のようなアプローチを検討することが推奨されます。
- 評価期間の調整: 病気休暇の期間が評価期間の大部分を占める場合、その期間を除外した上で評価を行う、または評価期間を延長して復帰後の状況を含めて評価するなどの柔軟な対応を検討します。
- 代替目標の設定: 病気休暇前に設定していた目標が達成困難になった場合、復帰後の状況や能力を考慮した上で、現実的な代替目標を再設定することも有効です。これにより、従業員は復帰後も目標に向かって努力しやすくなります。
- 評価要素の見直し: 成果のみに焦点を当てるのではなく、病気と向き合い、回復に向けて努力したプロセスや、復帰後の業務への意欲、周囲とのコミュニケーションといった定性的な要素も評価の対象に含めることを検討します。
- 診断書や産業医の意見の尊重: 従業員の健康状態や業務遂行能力については、医師の診断書や産業医の意見を十分に尊重し、無理のない範囲での業務調整や評価を行うことが重要です。
これらの対応は、単に法的なリスクを回避するだけでなく、病気休暇を取得した従業員が安心して職場復帰し、最大限の能力を発揮できるようなサポート体制を構築することにも繋がります。
公平かつ適切な人事評価のための具体的な方法
病気休暇中の従業員の人事評価は、企業にとって非常にデリケートな課題です。
しかし、適切な方法と姿勢で臨めば、従業員のモチベーションを維持し、企業へのエンゲージメントを高める機会にもなり得ます。
ここでは、公平性と配慮を両立させる具体的な評価方法について解説します。
減点しない、または考慮する具体例
病気休暇を理由に安易な減点を行うことは、従業員の不信感やモチベーション低下を招き、ひいては「不利益取扱いの禁止」に抵触するリスクも伴います。
病気休暇が評価期間の大部分を占める場合など、業務遂行が困難であった状況を考慮し、以下のような柔軟な評価基準の適用を検討しましょう。
- 評価期間の短縮や調整: 実際に業務に従事していた期間に限定して評価を行う、あるいは評価期間全体を調整し、勤務実績のある期間に重きを置くなどの対応が考えられます。
- 目標達成度の調整: 病気休暇の影響で目標達成が困難であった場合は、目標自体の見直しや、達成難易度を考慮した評価を行います。例えば、不可抗力な要因として評価に含めない、あるいは目標達成に向けた「プロセス」や「途中までの貢献」を評価対象とするなどが挙げられます。
- 未達成目標に対する説明責任の考慮: 目標が未達成であったとしても、病気休暇がその主要因である場合、その理由を十分に考慮し、従業員に過度な説明責任を求めない姿勢が重要です。
復帰後のパフォーマンスに焦点を当てる
病気休暇から復帰した従業員への評価では、復帰直後の業務量や難易度を調整し、段階的な目標設定を行うことが重要です。
そして、何よりも復帰後のパフォーマンスに焦点を当てて評価していくことが、従業員の円滑な職場復帰と再活躍を支援する上で不可欠です。
復帰直後は、体調や業務感覚が完全に戻っていないことも考慮し、無理のない範囲で業務を割り当てましょう。
その上で、設定した目標に対する達成度や、業務への取り組み姿勢、チームへの貢献度などを総合的に評価します。
例えば、復帰後の一定期間を「慣らし期間」と位置づけ、その期間は評価の対象外とする、あるいは評価項目を限定するといった配慮も有効です。
復帰後の着実な成長や意欲を評価することで、従業員は安心して業務に取り組むことができ、早期の戦力化にもつながります。
回復への努力や意欲を評価に含める
病気休暇取得者の評価は、単に目に見える成果だけでなく、回復への努力や復帰への意欲といった「プロセス」や「ポテンシャル」も加味した多角的な視点で行うことが非常に重要です。
病気休暇中であっても、回復に向けて主体的に取り組んだことや、職場復帰に向けて準備を進めたことなどは、従業員の成長意欲の表れと捉えることができます。
具体的な評価項目としては、以下のような観点を取り入れることが考えられます。
- 復帰に向けた取り組み: 治療計画の遵守、リハビリテーションへの参加、職場復帰支援プログラムへの積極的な参加など。
- 情報共有とコミュニケーション: 会社や上司との定期的な連絡、病状や復帰の見通しに関する適切な情報共有など。
- 学習意欲・自己啓発: 業務から離れている期間に、自身のスキルアップや知識習得に努めたこと。
これらの要素を評価に含めることで、従業員は会社が自分を多角的に見てくれていると感じ、安心感と信頼感を抱くことができるでしょう。
これは、単なる評価以上の、従業員のエンゲージメント向上に寄与する重要な視点となります。
人事評価における「配慮」と「公平性」のバランスの取り方
病気休暇を取得した従業員の人事評価においては、「配慮」と「公平性」のバランスをいかに取るかが極めて重要です。
過度な配慮は他の従業員の不公平感につながり、評価制度全体の信頼性を損なう可能性があります。
一方で、配慮を欠けば不利益取扱いの禁止に抵触し、従業員のモチベーション低下や離職を招くリスクがあります。
この両者を適切に両立させるための具体的な判断基準と運用例を見ていきましょう。
具体的な判断基準と運用例
公平性を保ちつつ配慮を行うためには、以下の点を踏まえた判断基準と運用が推奨されます。
まず、評価制度の透明性確保が不可欠です。
病気休暇中の評価に関するガイドラインや基準を明確に定め、従業員に周知することが重要です。
これにより、評価のプロセスや結果に対する納得感を高め、不公平感を軽減できます。
次に、評価者研修の実施も欠かせません。
管理職などの評価者に対して、病気休暇取得者の評価に関する法的な知識(不利益取扱いの禁止など)や、適切な評価方法、コミュニケーションの取り方について定期的な研修を行うべきです。
これにより、評価者個人の主観に依存するリスクを減らし、組織全体として統一された評価基準を適用することが可能になります。
また、複数評価者による評価も有効な手段です。
一人の評価者だけでなく、複数の管理職や人事担当者が関与することで、多角的な視点から評価を行うことができます。
特に病気休暇明けの従業員に対しては、復帰後のパフォーマンスだけでなく、回復への努力や職場復帰への意欲といった「プロセス」や「ポテンシャル」も評価項目に加えることを検討しましょう。
具体的な運用例としては、以下のようなアプローチが考えられます。
- 評価期間中の勤務実績が少ない場合: 休暇期間を除いた実働期間のパフォーマンスに基づいて評価を行う。目標設定も実働期間に合わせて調整し、達成度を測る。
- 復帰直後の一時的なパフォーマンス低下: 復帰直後は慣らし期間とみなし、短期間のパフォーマンスのみで判断せず、中長期的な視点での回復度合いや努力を評価に含める。
- 貢献意欲や組織へのエンゲージメント: 病気休暇中も会社や同僚との連絡を密に取るなど、組織への貢献意欲を示す行動は、評価にポジティブに考慮されるべきです。
これらの運用を通じて、企業は病気休暇取得者への配慮を示しつつも、評価制度全体の公平性を維持し、従業員エンゲージメントの向上と健全な組織運営に貢献できるでしょう。
従業員とのコミュニケーション:円滑な復帰と評価のために
病気休暇を取得した従業員が安心して職場復帰を果たし、その後のパフォーマンスを最大限に発揮するためには、人事評価のプロセスにおける適切なコミュニケーションが不可欠です。
透明性のある対話を通じて、従業員の不安を軽減し、エンゲージメントを高めることが、結果として企業全体の生産性向上にもつながります。
評価に関する事前の説明と合意形成
病気休暇中の従業員や復帰者に対しては、人事評価の考え方や基準について、通常以上に丁寧な説明と合意形成が求められます。
評価期間中に病気休暇を取得した場合の評価方法、復帰後の目標設定の考え方などを事前に明確に伝えることで、従業員は不当な評価を受けるのではないかという不安を解消し、安心して治療や復帰準備に専念できます。
評価面談においては、一方的に評価を伝えるのではなく、従業員自身の意見や状況、今後の目標に対する考えを傾聴する姿勢が重要です。
例えば、「今回は病気休暇期間が長かったため、業務成果という点では通常通り評価することは難しいですが、復帰に向けてどのような準備をしてきたか、今後の目標達成に向けてどのような意欲を持っているかを含めて評価したいと考えています」といった具体的な説明を行うことで、従業員は評価の意図を理解しやすくなります。
期待値のすり合わせを丁寧に行うことで、復帰後のミスマッチを防ぎ、目標達成へのモチベーション向上にもつながるでしょう。
定期的な面談とフィードバックの実施
病気休暇中および復帰後には、従業員との定期的な面談と適切なフィードバックの実施が非常に重要です。
休暇中であっても、可能な範囲で状況確認の連絡を取り、復帰の意向や体調の変化について把握に努めましょう。
この際、業務に関するプレッシャーを与えることなく、あくまで従業員への配慮を目的としたコミュニケーションを心がける必要があります。
復帰後は、特に初期の段階で、業務目標の調整や進捗状況の確認のための面談を頻繁に設けることが推奨されます。
体調や業務への適応状況に応じて目標を柔軟に見直し、達成可能な範囲で目標を設定することで、従業員は無理なく業務に慣れていくことができます。
また、ポジティブなフィードバックを積極的に与えることで、従業員の自信回復とモチベーション維持を支援し、円滑な職場復帰を強力に後押しすることが可能になります。
これにより、従業員は孤立感を感じることなく、企業の一員として支えられていることを実感できるでしょう。
よくある疑問とその回答(Q&A)
Q&A形式で具体的な疑問に回答
病気休暇に関する人事評価では、個別のケースで判断に迷うことが少なくありません。
ここでは、人事担当者や管理職の皆様が抱きやすい具体的な疑問に対し、実践的な回答をQ&A形式でご紹介します。
Q1: 病気休暇が評価期間の大部分を占めた場合、どのように評価すべきですか?
A1: 評価期間の大部分を病気休暇が占めた場合、通常通りの業務成果による評価は困難です。
この場合は、病気休暇に至るまでの業務貢献度、復帰に向けた努力や意欲、あるいは休職前のパフォーマンスなどを考慮した上で、減点とならないよう配慮することが重要です。
無理に評価をつけようとせず、対象期間の評価を「保留」とし、復帰後の新たな評価期間で実績を評価する、あるいは上司との面談を通じて、病気からの回復状況や今後のキャリアプランについて話し合う機会を設けるといった対応も考えられます。
Q2: 復帰直後にパフォーマンスが一時的に低下した場合、評価にどう影響させますか?
A2: 病気休暇からの復帰直後は、心身の慣らし期間が必要であり、一時的にパフォーマンスが低下することは自然なことです。
この期間のパフォーマンスのみで評価を下すことは避け、復帰支援の一環として、業務内容や目標設定を調整するなどの配慮が必要です。
評価においては、短期間での成果を求めるのではなく、徐々に業務に慣れ、以前のパフォーマンスを取り戻そうとする姿勢や努力を評価の対象とすることが望ましいでしょう。
Q3: 評価結果に不満を持つ従業員から相談があった場合、どのように対応すべきですか?
A3: 評価結果に不満を持つ従業員からの相談には、真摯かつ丁寧に対応することが不可欠です。
まず、評価の根拠を明確に説明し、従業員の意見を傾聴する姿勢を見せることが重要です。
特に病気休暇が影響していると感じている場合、会社として不利益な取り扱いをしていないことを具体的に示し、評価の透明性を確保する必要があります。
必要に応じて、再評価の機会を設ける、あるいは第三者(人事担当者など)を交えて話し合いの場を設けるなど、公平な解決を目指しましょう。
まとめ:病気休暇取得者を支え、共に成長する評価制度を目指して
本記事の要点と今後の展望
本記事では、病気休暇を取得した従業員の人事評価について、人事担当者や管理職が直面する課題と解決策を詳細に解説しました。
重要な要点は以下の通りです。
まず、病気休暇中の従業員を評価する際には、「不利益取扱いの禁止」という法的原則を深く理解し、病気休暇を理由に不当な評価を行うことを避ける必要があります。
評価期間中に病気休暇を取得した場合は、業務に従事できなかった期間を考慮し、減点しない、あるいは評価対象期間を調整するなどの配慮が求められます。
また、病気休暇から復帰した従業員に対しては、復帰後のパフォーマンスに焦点を当て、回復への努力や職場復帰への意欲といったプロセスも評価に含めることが重要です。
これにより、従業員のエンゲージメントを維持し、円滑な職場復帰と早期の戦力化を促すことができます。
「配慮」と「公平性」のバランスを取ることは容易ではありませんが、具体的な判断基準を設け、従業員との丁寧なコミュニケーションを通じて相互理解を深めることが、トラブルを未然に防ぎ、信頼関係を構築する上で不可欠です。
病気休暇取得者への適切な評価は、単に個人の問題に留まらず、企業全体の生産性向上や持続可能な組織運営に深く関わります。
従業員が安心して療養し、復帰後も意欲的に働ける環境を整備することは、企業価値を高める上で不可欠な取り組みと言えるでしょう。
本記事が、皆様の組織における評価制度の改善と、より良い職場環境の構築の一助となれば幸いです。