年休とは?有給休暇との違いから取得方法まで徹底解説
この記事の監修者
株式会社マイビジョン代表取締役 玉田響
中小・ベンチャー企業を中心に、理念設計(MVV設計)や採用戦略の構築などを50社以上支援。経営者と伴走しながら、組織づくり・人材育成に取り組んでいる。採用媒体の活用やSNS運用アドバイスでも実績あり。
「年休」という言葉は知っているけど、具体的にどんな制度なのか、有給休暇とどう違うのか、きちんと理解できていますか? この記事では、年休の基礎知識から、取得条件、付与日数、申請方法、さらには取得する上での注意点まで、分かりやすく解説します。あなたの疑問を解消し、年休を最大限に活用して、仕事もプライベートも充実した毎日を送るための第一歩を踏み出しましょう。
目次
年休(年次有給休暇)とは?
年休(年次有給休暇)とは、労働者が心身のリフレッシュを図り、生活の充実を図るために、法律によって定められた休暇制度です。一定期間継続して勤務した労働者に対して、企業は毎年一定の日数の休暇を与える義務があります。この休暇を取得した際も、賃金が支払われるため「有給」休暇と呼ばれます。年休の取得は、労働者の権利であり、企業は正当な理由なく取得を拒否することはできません。その目的は、労働者の健康維持、ワークライフバランスの向上、そして生産性の向上に繋がるとされています。
有給休暇との違い
「年休」という言葉は、「年次有給休暇」の略称として広く使われています。そのため、一般的に「年休」と「有給休暇」は全く同じものを指しており、法的に区別されるものではありません。しばしば、これらが異なる種類の休暇であると混同されることがありますが、年次有給休暇制度において、付与される休暇のことを指す場合、「年休」も「有給休暇」も同じ意味で用いられます。法律上は「年次有給休暇」という名称で規定されており、労働者はこの休暇を「年次有給休暇」として取得する権利を有します。
年休の取得条件
年次有給休暇(年休)を取得するためには、労働基準法で定められた一定の条件を満たす必要があります。具体的には、「勤続期間」と「出勤率」が主な条件となります。これらの条件をクリアすることで、労働者は年休を取得する権利を得ることができます。ここでは、年休を取得するために必要なこれらの条件について、詳しく解説していきます。
取得できる日数
年休の取得条件を満たした労働者には、勤続年数に応じて一定の日数が付与されます。この付与日数は、勤続年数が長くなるほど増加する傾向にあります。例えば、入社6ヶ月経過時点で10日の年休が付与されますが、その後は勤続年数が増えるごとに、さらに日数が増えていきます。具体的には、1年ごとに一定の日数が加算され、最大で20日(※)が付与されるようになります。この「勤続年数」と「付与日数」の関係を理解することは、自身の年休がどれだけ付与されるかを知る上で重要です。
(※)パートタイム労働者など、所定労働時間が短い労働者については、所定労働日数に応じて日数が変わります。
付与日数の計算方法
年休の付与日数は、前述の通り勤続年数によって決まりますが、その計算には「出勤率」が関わってきます。原則として、出勤率が8割以上であれば、勤続年数に応じた日数が付与されます。出勤率の計算は、以下の式で行われます。
年休付与日数の計算例:
ある労働者の出勤率が8割以上の場合、勤続年数に応じて以下のように日数が付与されます。
勤続6ヶ月: 10日
勤続1年6ヶ月: 11日
勤続2年6ヶ月: 12日
勤続3年6ヶ月: 14日
勤続4年6ヶ月: 16日
勤続5年6ヶ月: 18日
勤続6年6ヶ月以上: 20日
このように、勤続年数が増えるにつれて付与日数が増加していくことがわかります。ただし、これはあくまで出勤率が8割以上の場合の計算例です。出勤率が8割未満の場合は、年休が付与されない、あるいは日数が減算されるなどの取り扱いとなる場合がありますので注意が必要です。
年休の取得方法
年次有給休暇(年休)は、労働者の権利であり、計画的に取得することでワークライフバランスの向上や心身のリフレッシュに繋がります。ここでは、年休を効果的に取得するための申請方法、取得にあたっての注意点、そして会社側が取りうる措置について解説します。
申請方法と注意点
年休をスムーズに取得するためには、適切な申請手続きと周囲への配慮が不可欠です。以下の点に注意して、計画的に申請を行いましょう。
- 申請時期: 会社の就業規則に定められた申請期間(例:○日前まで)を確認し、余裕をもって申請することが重要です。直前や繁忙期を避けることで、承認されやすくなります。
- 申請方法: 所定の申請書を提出するか、指定された方法(例:社内システム、メール)で申請します。誰に、いつ、何日間の年休を取得したいのかを明確に伝えましょう。
- コミュニケーション: 申請前に、直属の上司やチームメンバーに取得希望日を伝え、業務への影響がないか相談することが推奨されます。特に、締切や重要な会議など、業務の進行に影響が出る可能性がある場合は、事前に十分なコミュニケーションを取ることが大切です。
- 理由の伝達: 年休取得の理由を詳細に伝える義務はありませんが、状況によっては「私用のため」など、簡潔に伝えると円滑に進むことがあります。長期休暇や連休の取得の場合は、業務の引継ぎ計画を具体的に示すと、会社側も安心して承認しやすくなります。
- 代替要員の確保: 自分が不在の間、業務が滞らないように、可能であれば同僚に協力を依頼したり、引継ぎ資料を準備したりするなど、具体的な対策を講じましょう。
時季変更権とは
年休は労働者の権利ですが、会社の事業の正常な運営を妨げるような時期に取得されることを避けるため、会社には「時季変更権」が認められています。これは労働基準法第39条第5項に定められており、従業員が希望した時季ではなく、会社が指定する別の時季に年休を取得させることができる権利です。ただし、この権利は無制限ではなく、会社は時季変更権を行使するにあたり、その時季に年休を取得されることが事業の正常な運営を妨げるという具体的な理由を示せる場合に限られます。また、時季変更権の行使は、年休の取得自体を拒否するものではなく、あくまで取得時期の変更を求めるものです。この権利がどのように運用されるかは、各社の就業規則や慣例によって異なりますが、原則として、従業員からの申請に対して、会社がその時季の取得を認められない場合に、代替となる取得時季を提示する形で行使されます。
年休に関する法的情報
年休の取得に関する法的根拠である労働基準法の内容と、近年の法改正による変更点について解説します。
労働基準法での定め
労働基準法は、労働者の権利保護を目的とした日本の主要な法律です。その中でも、年次有給休暇(年休)に関しては、第39条に詳細な規定が設けられています。この条項により、一定期間継続して勤務した労働者には、所定労働日数に応じた有給休暇が付与されることが定められています。この法律の趣旨は、労働者が心身のリフレッシュを図り、健康を維持しながら働くことを保障することにあります。労働者は、この法律で定められた権利に基づき、事業の正常な運営を妨げない限り、原則として自由に休暇を取得できます。企業は、労働基準法に定められた基準を満たす年休制度を整備し、労働者に付与する義務があります。
最新の法改正情報
近年、年休制度を取り巻く環境は変化しており、法改正も行われています。特に、2019年4月1日から施行された改正労働基準法により、年10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、年5日の有給休暇を取得させることが使用者の義務となりました。これは、年休の取得率向上を目的としたもので、取得できなかった場合には、使用者が時季を指定して取得させるか、あるいは買い取るなどの対応が求められます。今後も、働き方改革の流れの中で、年休制度のさらなる柔軟化や、多様な働き方に対応するための見直しが進む可能性があります。企業は、これらの最新の法改正情報を常に把握し、適切な運用を行うことが重要です。
年休取得のメリット
年次有給休暇(年休)を取得することは、従業員個人だけでなく、企業全体にとっても多くの具体的なメリットをもたらします。心身のリフレッシュや生産性の向上といった効果は、持続的な成長と良好な職場環境の維持に不可欠です。
年休取得によって得られる主なメリットは以下の通りです。
- 心身のリフレッシュと健康維持: 定期的な休暇は、日々の業務で蓄積された疲労やストレスを解消し、心身のリフレッシュを促します。これにより、従業員の健康維持に繋がり、長期的に見て病気や怪我による長期離脱のリスクを低減できます。
- 生産性向上と創造性の刺激: 十分な休息を取ることで、従業員は集中力や注意力を回復させ、業務の生産性向上に繋がります。また、休暇中に普段とは異なる経験をすることで、新たな視点やアイデアが生まれ、創造性の刺激にもなります。
- モチベーション向上とエンゲージメント強化: 休暇を取得できる安心感は、従業員のエンゲージメントを高め、仕事へのモチベーション向上に貢献します。会社が従業員の休息を尊重していると感じることは、組織への忠誠心や貢献意欲を高める要因となります。
- ワークライフバランスの実現: 年休は、仕事と私生活の調和、すなわちワークライフバランスを実現するための重要な手段です。家族との時間、趣味、自己啓発など、仕事以外の活動に時間を費やすことで、人生の満足度を高めることができます。
- 離職率の低下と優秀な人材の確保: 良好なワークライフバランスが実現でき、心身ともに健康で意欲の高い従業員は、企業への定着率が高まります。これは、採用コストの削減や、優秀な人材を継続的に確保する上で大きなメリットとなります。
年休に関するよくある質問
読者からよく寄せられる年休に関する疑問点について、Q&A形式で分かりやすく回答します。
- Q: 年休とは何ですか? A: 年次有給休暇(ねんじゆうきゅうか)の略で、労働者の心身の疲労を回復させ、ゆとりある生活を保障するために法律で定められた休暇です。一定期間勤務した労働者に対して、付与日数以上の休暇が与えられます。
- Q: 年休は年に何日もらえますか? A: 採用されてから6ヶ月継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤した場合、10日間の年休が付与されます。その後も、勤務期間や出勤率に応じて、付与日数は増えていきます。例えば、1年6ヶ月勤務で11日、2年6ヶ月勤務で12日というように、最大で20日間付与されます。
- Q: 年休は繰り越せますか? A: はい、年休は原則として翌年度に繰り越すことができます。未使用の年休は、2年間有効です。ただし、会社によっては就業規則で繰り越し日数に上限を設けている場合もあります。
- Q: 年休の取得を会社に拒否されますか? A: 原則として、労働者が希望する日に年休を取得する権利があります。ただし、会社は事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に取得させることができます(時季変更権)。しかし、完全に拒否することはできません。
- Q: 退職した場合、年休はどうなりますか? A: 未消化の年休は、退職時に買い取ってもらうか、退職日までに取得することができます。ただし、買い取りは法律上の義務ではなく、会社の判断によります。未消化の年休が残っている場合は、退職前に会社に確認することをおすすめします。
- Q: 年休の取得に期限はありますか? A: 年休の付与された日から2年間が有効期限です。この期間内に取得しない場合、年休は消滅します。