エンゲージメントサーベイとは? 目的、質問項目、効果、導入方法を徹底解説
この記事の監修者
株式会社マイビジョン代表取締役 玉田響
中小・ベンチャー企業を中心に、理念設計(MVV設計)や採用戦略の構築などを50社以上支援。経営者と伴走しながら、組織づくり・人材育成に取り組んでいる。採用媒体の活用やSNS運用アドバイスでも実績あり。
「従業員エンゲージメント」という言葉を耳にする機会が増えたものの、具体的にどのようなものか、どのように活用すれば良いのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、エンゲージメントサーベイとは何か、その目的や効果、具体的な質問項目例、導入ステップなど、人事担当者の方々が知りたい情報を網羅的に解説します。この記事を読めば、エンゲージメントサーベイの基礎知識から、組織改善に繋げるための活用方法まで、全て理解できるでしょう。
目次
エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイは、従業員が組織に対して抱く愛着心や貢献意欲、すなわち「エンゲージメント」を測定・可視化するための調査です。現代の組織運営において、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高めることは、組織全体のパフォーマンス向上に不可欠とされています。本セクションでは、エンゲージメントサーベイの基本的な定義から、それがなぜ組織にとってそれほど重要視されるのか、その核心に迫ります。働きがいのある職場作りや、戦略的な人事施策を検討する上で、エンゲージメントサーベイは欠かせないツールと言えるでしょう。
エンゲージメントサーベイの定義
エンゲージメントサーベイとは、従業員が自身の所属する組織に対して抱く、心理的なつながりや仕事への熱意、貢献意欲といったエンゲージメントの度合いを定量的に測定することを目的とした調査です。具体的には、従業員の満足度、仕事への情熱、組織へのロイヤリティ、推奨意向(NPS®のような指標)、上司や同僚との関係性、キャリア開発への期待、組織のビジョンへの共感度など、多岐にわたる項目について質問票形式で実施されます。この調査を通じて、組織は従業員がどのような点に満足し、どのような点に不満や課題を感じているのかを客観的に把握することができます。その結果は、単なる現状把握にとどまらず、従業員エンゲージメントの向上に向けた具体的な改善策を立案・実行するための重要なインサイトを提供します。つまり、エンゲージメントサーベイは、従業員の声を組織運営に反映させ、より良い職場環境を築くための基盤となるのです。
なぜエンゲージメントサーベイが重要なのか?
エンゲージメントサーベイが組織にとって極めて重要である理由は、それが「従業員エンゲージメント」の向上に直結し、ひいては「組織活性化」と「離職率低下」といった経営上の大きな成果をもたらすからです。まず、エンゲージメントサーベイを実施することで、組織は従業員が抱える潜在的な課題や不満を早期に発見できます。これにより、従業員のモチベーション低下や、それに伴う生産性の低下、さらには優秀な人材の流出といったリスクを未然に防ぐことが可能になります。 従業員エンゲージメントが高い状態は、従業員が自発的に業務に取り組み、組織の目標達成に貢献しようとする意欲が高いことを意味します。このような従業員が増えることで、チーム全体の士気が高まり、イノベーションが生まれやすくなるなど、組織全体の活力が向上します。この「組織活性化」は、変化の激しい現代ビジネス環境において、企業が競争優位性を維持・強化していく上で不可欠な要素です。 さらに、エンゲージメントサーベイの結果に基づいた改善策を実行することは、従業員の満足度と定着率の向上に大きく貢献します。従業員が「自分の声が組織に届き、それが改善につながっている」と感じる経験は、組織への信頼感と愛着心を深めます。結果として、不満による「離職率低下」が期待でき、採用・育成コストの削減や、組織の知見・経験の蓄積といったメリットも享受できるのです。エンゲージメントサーベイは、これらの好循環を生み出すための羅針盤となるのです。
従業員満足度調査との違い
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査(ES調査)は、どちらも従業員の意識を把握するための調査ですが、その目的や測定する対象、得られる示唆には大きな違いがあります。どちらの調査を導入すべきか迷っている方のために、本セクションでは両者の違いを明確に解説します。
従業員満足度調査とは?
従業員満足度調査(Employee Satisfaction Survey, ES調査)は、従業員が現在の職務や職場環境に対してどれだけ満足しているかを測る調査です。具体的には、給与、福利厚生、人間関係、労働時間、職場環境といった、従業員の「満足・不満」に直結する要素を測定します。主な目的は、従業員の不満点を特定し、それらを改善することで、より働きやすい環境を整備することにあります。これにより、離職率の低下や、基本的な職場環境の質の向上を目指します。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の比較
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査は、表面的な違いだけでなく、より本質的な部分で異なります。エンゲージメントサーベイは、従業員が組織や仕事に対してどれだけ「愛着」「情熱」「貢献意欲」を持っているか、つまり、組織への貢献意欲や心理的なつながりを測定します。一方、従業員満足度調査は、前述の通り、給与や待遇、労働条件などに対する「満足・不満」を測定するものです。 この両者の違いを以下の表にまとめました。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の主な違い
| 特徴 | エンゲージメントサーベイ | 従業員満足度調査 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 組織への貢献意欲、情熱、愛着の向上 | 従業員の不満点の特定と、職場環境の基本的な改善 |
| 測定する対象 | 組織への心理的つながり、仕事への情熱、組織への推薦意欲 | 給与、福利厚生、人間関係、労働時間、職場環境などへの満足度 |
| 得られる示唆 | 従業員のエンゲージメントレベル、組織文化、イノベーションの可能性 | 従業員の不満点、離職リスク、基本的な職場環境の課題 |
| 重視する結果 | 生産性向上、イノベーション促進、長期的な定着率向上 | 離職率低下、従業員満足度の向上 |
| 組織への影響 | 組織の成長と持続可能性に直接貢献する | 基本的な職場環境を維持・改善する |
このように、エンゲージメントサーベイは、従業員が組織に対してどれだけコミットし、自発的に貢献しようとするかという、より戦略的で本質的な従業員の意識を捉えるものです。従業員満足度調査が、現状の待遇や環境に対する「満足・不満」に焦点を当てるのに対し、エンゲージメントサーベイは、組織の目標達成に向けた従業員の「意欲」や「貢献度」に焦点を当てます。そのため、エンゲージメントサーベイの結果は、生産性向上やイノベーション促進、長期的な定着率向上といった、組織の持続的な成長に直接貢献する示唆をもたらすことが多いのです。
エンゲージメントサーベイのメリット
エンゲージメントサーベイを実施することで、組織は従業員エンゲージメントの向上、離職率の低下、組織改善、そして働きがいのある職場作りといった多岐にわたるメリットを享受できます。特に、離職率の高さに悩んでいる企業や、従業員のモチベーション低下を感じている組織、さらには組織の活性化や生産性向上を目指している企業にとって、エンゲージメントサーベイは強力なツールとなります。本セクションでは、これらのメリットの中でも特に「離職率の低下」と「生産性の向上」に焦点を当て、その具体的な効果を解説します。また、組織の一体感向上や従業員の主体性向上といった側面にも触れ、サーベイがもたらす包括的な価値を明らかにします。
離職率の低下
エンゲージメントサーベイは、従業員が抱える不満や課題を早期に発見し、離職意向を把握するための重要な手段です。サーベイ結果を分析することで、離職リスクの高い従業員や部署を特定し、個別のフォローアップや改善策を講じることが可能になります。これにより、人材流出を防ぎ、定着率の向上に直接的に貢献します。従業員の声に耳を傾け、それに基づいた改善を行うことは、従業員のエンゲージメントを高め、結果として組織全体の離職率低下へと繋がります。
生産性の向上
エンゲージメントの高い従業員は、自社や業務に対して強い貢献意欲を持っており、結果として高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。エンゲージメントサーベイを通じて、従業員のモチベーションを維持・向上させる要因を特定し、それらを強化することで、個々の従業員のパフォーマンスが向上します。これが組織全体に波及することで、生産性の向上に大きく貢献します。従業員が仕事にやりがいを感じ、主体的に業務に取り組む姿勢は、組織の競争力を高める上で不可欠です。
組織の一体感向上
エンゲージメントサーベイは、従業員が組織のビジョンや目標に対する理解を深め、共感する機会を提供します。共通の目的意識や価値観を共有することで、部署間やチーム内の連携が強化され、組織全体としての一体感が高まります。従業員一人ひとりが組織の一員であるという意識を持つことは、チームワークを促進し、より強固な組織文化の醸成に繋がります。
従業員の主体性向上
エンゲージメントサーベイを通じて、従業員の声が組織運営に反映されるという経験は、従業員の自己肯定感を高め、業務に対する当事者意識を育みます。自分の意見が重要視され、組織の変化に貢献できるという実感は、従業員にさらなる主体性をもたらします。これにより、従業員はより積極的に課題解決に取り組むようになり、組織全体の活力を高める原動力となります。
エンゲージメントサーベイの質問項目例
エンゲージメントサーベイは、従業員の組織や仕事に対する関与度、満足度、意欲を測定するための重要なツールです。ここでは、組織へのエンゲージメント、仕事へのエンゲージメント、上司・同僚との関係性、キャリアに関する質問といったカテゴリー別に、実際に活用できる質問項目の例を提示します。これらの例は、貴社のエンゲージメントサーベイ設計の参考になるでしょう。
組織へのエンゲージメント
このセクションでは、従業員が組織のビジョン、価値観、組織文化に対してどの程度共感しているかを測るための質問項目例を紹介します。組織の目指す方向性や理念への理解度、そしてそれらに対する賛同度を把握することは、組織の一体感を醸成する上で不可欠です。
仕事へのエンゲージメント
ここでは、従業員が自身の現在の仕事内容、そこから得られるやりがい、そして業務における裁量権といった側面に対して、どの程度エンゲージメントを感じているかを測定するための質問項目例を提示します。仕事の質や、それに伴う満足度、モチベーションの源泉を理解することに繋がります。
上司・同僚との関係性
このセクションでは、チームワーク、円滑なコミュニケーション、そして上司からのサポート体制など、職場の人間関係に焦点を当てた質問項目例を挙げます。良好な人間関係は、従業員の心理的安全性を高め、生産性向上にも寄与するため、その実情を把握することが重要です。
キャリアに関する質問
最後に、従業員のキャリアに対するエンゲージメントを測るための質問項目例です。成長機会の提供、明確なキャリアパスの存在、そしてスキル開発への支援といった要素が、従業員の長期的なエンゲージメントにどのように影響しているかを明らかにします。
エンゲージメントサーベイの実施ステップ
エンゲージメントサーベイを自社で導入・実施するための具体的なステップを解説します。ターゲットの「導入ステップを知りたい」「エンゲージメントサーベイを実施するメリットを知りたい」というニーズに対応します。目的の設定から調査設計、実施、分析、改善策の立案・実行までの一連の流れを、分かりやすく順序立てて説明します。関連キーワード「エンゲージメントサーベイ 導入」「エンゲージメントサーベイ 実施方法」も参照します。
目的の設定
エンゲージメントサーベイを実施する最初のステップは、その目的を明確に設定することです。何のためにサーベイを行うのか、どのような従業員の課題を明らかにしたいのか、あるいはどのような組織目標の達成に貢献させたいのかを具体的に定義します。目的が明確になることで、後続の調査設計や結果分析の方向性が定まり、サーベイ全体の精度と効果を高めることができます。例えば、「離職率の低下」「生産性の向上」「組織文化の醸成」など、具体的な目標を設定することが重要です。
調査設計(質問項目の作成、調査方法の決定)
目的が定まったら、それに沿った調査設計を行います。ここでは、どのような質問項目を設定するか、回答形式をどうするか、いつ、誰に対して調査を実施するかを具体的に決定します。質問項目は、目的達成に直結する内容である必要があります。一般的には、エンゲージメントの核となる要素(やりがい、成長実感、人間関係、公平性など)を網羅しつつ、自社の状況に合わせたカスタマイズも検討します。回答形式は、選択式、自由記述式などを組み合わせ、回答者の負担と分析のしやすさを考慮します。調査方法としては、Webアンケート、紙媒体、対面インタビューなどが考えられます。これらの「調査設計」における各要素は、効果的な「実施方法」の基盤となります。
調査の実施
調査設計が完了したら、いよいよ「調査の実施」段階に入ります。このフェーズでは、従業員に対してサーベイの目的、回答方法、プライバシー保護などについて丁寧に周知することが不可欠です。回答率を高めるためには、経営層からのメッセージ発信や、回答しやすい環境整備が重要となります。実施期間中は、質問や不明点に対応するためのサポート体制を整え、円滑な進行を心がけます。従業員が安心して回答できるような配慮が、率直な意見を引き出す鍵となります。
結果の分析
収集されたデータは、そのままでは活用できません。このステップでは、「データ分析」を通じて、従業員のエンゲージメントレベルを客観的に把握し、組織が抱える具体的な「課題特定」を行います。単純な集計だけでなく、部署別、役職別、勤続年数別などのクロス集計を行い、エンゲージメントに影響を与えている要因を深掘りします。自由記述式の回答からは、定量データだけでは見えてこない従業員の生の声や潜在的なニーズを読み取ることが重要です。分析結果を分かりやすく可視化し、関係者間で共有することも、次のステップへの円滑な移行に繋がります。
改善策の立案と実行
分析結果から明らかになった課題に対し、具体的な「改善策」を立案し、「実行」に移す段階です。このプロセスは、サーベイの目的達成に直結する最も重要な部分であり、「PDCA」サイクルを回すための核となります。改善策は、実現可能で、かつ効果が期待できるものを選定します。例えば、コミュニケーション不足が課題であれば、社内イベントの企画や情報共有ツールの導入などが考えられます。策定した改善策は、担当者を明確にし、実行計画を立て、着実に推進します。そして、その効果を測定し、必要に応じて見直しを行うことで、組織のエンゲージメント向上を持続的に図っていきます。
エンゲージメントサーベイ導入の注意点
エンゲージメントサーベイは、従業員の満足度や組織への貢献意欲を把握し、組織改善につなげるための有効なツールです。しかし、その導入・実施にあたってはいくつかの重要な注意点があります。本セクションでは、エンゲージメントサーベイを成功させるために、目的の明確化から結果のフィードバックまで、具体的な注意点を解説します。
目的を明確にする
エンゲージメントサーベイを実施する最も重要なステップは、その目的を明確にすることです。何のためにサーベイを行うのか、どのような課題を解決したいのか、あるいはどのような状態を目指したいのかを具体的に定義しないまま進めると、質問項目の選定が曖昧になったり、収集したデータの活用方法が見えなくなったりします。目的が明確であれば、サーベイ設計から結果の分析、その後のアクションプラン策定まで、一貫性のあるアプローチが可能になります。
質問項目の選定
サーベイの目的達成のためには、適切な質問項目の選定が不可欠です。自社の組織文化、事業特性、従業員が抱える可能性のある課題に合致しない質問項目を羅列しても、有益な示唆は得られません。質問項目の妥当性を十分に検討し、従業員が正直かつ率直に回答できるような、具体的で分かりやすい質問を作成することが重要です。
従業員への説明と協力
サーベイを成功させるためには、従業員一人ひとりの理解と協力が不可欠です。サーベイの目的、回答がどのように活用されるのか、そして最も重要な「匿名性」がどのように担保されるのかについて、事前に丁寧なコミュニケーションを行う必要があります。従業員が安心して回答できる環境を整えることで、より信頼性の高いデータを収集することができます。
プライバシーへの配慮
従業員の回答内容に関するプライバシー保護と匿名性の確保は、エンゲージメントサーベイにおける信頼関係の基盤となります。個人が特定されるような形でデータが扱われるのではないかという懸念は、従業員の正直な回答を妨げます。回答者のプライバシーを最大限に尊重し、個人情報保護の観点から厳格な管理体制を構築することが求められます。
結果のフィードバック
サーベイを実施し、データを収集しただけで終わらせてはいけません。調査結果は、従業員に対して透明性をもって、かつ分かりやすくフィードバックすることが重要です。どのような傾向が見られたのか、組織としてどのような課題があるのかを共有し、それを受けてどのような改善策を講じていくのかを具体的に伝えることで、従業員のエンゲージメント向上と組織への信頼感を高めることができます。
エンゲージメントサーベイの効果的な活用方法
エンゲージメントサーベイで得られた結果を、組織改善に繋げるための効果的な活用方法を解説します。ターゲットの「エンゲージメントサーベイの効果的な活用方法を知りたい」というニーズに応え、結果の分析・解釈、改善策の立案、従業員へのフィードバック、定期的な見直しといった実践的なアプローチを示します。最終目標である「従業員エンゲージメントを向上させ、組織を活性化できる」状態を目指すための重要なステップです。requiredElementsの「効果的な活用方法(結果の分析、改善策の立案、フィードバック)」を参照します。
結果の分析と解釈
単なる集計にとどまらず、結果の背景にある要因を深く分析し、組織の強み・弱みを正確に理解する方法を解説します。ここでは、詳細なデータ分析を通じて、従業員が何に満足し、何に不満を感じているのか、その根本的な要因を特定することが重要です。この要因分析から得られる示唆は、後の改善策立案の基礎となります。
改善策の立案
分析結果に基づき、具体的で実行可能な改善策を、関係者と協力して立案するプロセスを説明します。特定された課題に対して、実現可能性と効果を考慮したアクションプランを作成します。これらの改善策は、現場の意見も取り入れながら、具体的な目標設定とともに進めることが成功の鍵となります。
従業員へのフィードバック
分析結果と立案した改善策を、従業員に分かりやすく、誠実に伝えることの重要性と方法を解説します。結果の透明性を保ち、なぜその改善策が選ばれたのかを丁寧に説明することで、従業員の理解と協力を得やすくなります。このオープンなフィードバックは、組織全体のエンゲージメントを高めるために不可欠です。
定期的な見直しと改善
一度の実施で終わらず、定期的なサーベイ実施と改善活動を通じて、継続的にエンゲージメントを高めるサイクルを構築する方法を説明します。PDCAサイクルを回し、前回からの変化を追跡しながら、さらなるエンゲージメント向上を目指します。この継続的改善のアプローチが、組織の持続的な成長と活性化に繋がります。
パルスサーベイとセンサス
エンゲージメントサーベイの実施形態として、パルスサーベイとセンサスはそれぞれ異なる特徴を持っています。どちらの手法を選ぶかは、組織が何を達成したいのか、どのような情報が必要なのかによって大きく左右されます。このセクションでは、両者の違いを明確にし、それぞれのメリット・デメリット、そしてどのような状況に適しているかを解説します。
パルスサーベイとは
パルスサーベイは、その名の通り、短い間隔で頻繁に実施されるエンゲージメントサーベイです。従業員からのフィードバックを「パルス(脈拍)」のように捉え、組織の状態をリアルタイムに近い形で把握することを目指します。その主な特徴は、質問項目が少なく、回答に要する時間が短いことです。この「迅速性」は、変化の速い現代のビジネス環境において、課題を早期に発見し、迅速な対策を講じる上で大きなメリットとなります。また、「頻度」が高いことから、従業員エンゲージメントの継続的なモニタリングや、特定の施策の効果測定にも適しています。しかし、質問項目が限定されるため、表面的な問題しか捉えられない可能性や、回答者にとって頻繁な回答が負担となる場合があるというデメリットも考慮する必要があります。
センサスとは
センサス(または年次サーベイ)は、より広範で詳細な情報を収集するために、比較的低い「頻度」で実施されるエンゲージメントサーベイです。組織全体の従業員を対象とし、エンゲージメント、満足度、企業文化、リーダーシップなど、多岐にわたる項目を網羅的かつ詳細に調査します。この「網羅性」と「詳細」さにより、組織の現状を深く理解し、長期的な視点での戦略策定や組織変革の基盤となる貴重なデータを得ることができます。しかし、実施に時間とリソースが多く必要となり、結果の分析と改善策の実施までに時間がかかるというデメリットがあります。短期的な変化への対応や、迅速なフィードバックループの構築には、センサス単独では限界がある場合があります。
どちらを選ぶべきか
パルスサーベイとセンサスのどちらを選ぶべきかは、組織の目標、現在の状況、そして収集したい情報の深さによって異なります。
パルスサーベイは、変化の激しい環境で迅速な対応が必要な場合、特定のプロジェクトや施策の効果を継続的に測定したい場合、または従業員のエンゲージメントレベルを日常的に把握したい場合に有効です。
一方、センサスは、組織全体の包括的な現状把握、長期的な戦略立案、年次のパフォーマンス評価、または組織文化の深い理解が必要な場合に最適です。
多くの組織では、これら二つの手法を組み合わせる「ハイブリッド戦略」が最も効果的であると考えられます。例えば、年次のセンサスで全体像を把握し、その結果を受けて特定の問題領域に対してパルスサーベイを継続的に実施することで、迅速な改善と長期的な組織強化の両立を図ることができます。どちらの手法を採用するにしても、サーベイの結果をどのように活用し、具体的なアクションにつなげるかという「使い分け」と「戦略」が、エンゲージメント向上成功の鍵となります。
まとめ
この記事では、エンゲージメントサーベイの実施から分析、そして改善策の立案に至るまでの一連の流れを解説しました。エンゲージメントサーベイは、単なる従業員の満足度調査ではなく、組織の健全性を測り、持続的な成長を遂げるための羅針盤となる重要なツールです。本稿で得た知識を活かし、サーベイの結果を組織開発に繋げることで、従業員エンゲージメントの向上、離職率の低下、そして生産性の向上といった具体的な成果を目指しましょう。
エンゲージメントサーベイの重要性と今後の展望
現代のビジネス環境において、エンゲージメントサーベイの重要性はますます高まっています。急速な市場の変化や多様化する働き方の中で、組織が競争力を維持し、持続的に発展していくためには、従業員のエンゲージメントを高く保つことが不可欠です。エンゲージメントサーベイは、従業員の声なき声を聞き、組織が抱える課題を早期に発見するための強力な手段となります。 今後の展望としては、AIを活用した分析精度の向上や、リアルタイムでのサーベイ実施による迅速な状況把握などが期待されます。また、単発の調査に留まらず、継続的なフィードバックループを構築し、組織開発のプロセスに深く組み込んでいくことが、より効果的な活用法となるでしょう。テクノロジーの進化とともに、エンゲージメントサーベイは組織のポテンシャルを最大限に引き出すための、より洗練されたツールへと進化していくはずです。