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経営理念は変更しても大丈夫?注意すべき点を徹底解説!
経営理念は、企業の存在意義や価値観を示す指針であり、企業の行動や判断の基準となるものだ。
そのため、経営理念は企業にとって非常に重要な存在であり、一度定めたら変更すべきでないと考える人もいるだろう。
しかし、経営理念を変更することは一様にして悪いことではない。
むしろ、経営環境の変化に対応し、企業の成長を図るために、経営理念を適宜見直していくことが必要な場合もある。
そしてそれと同時に、経営理念を変更する際にはいくつかの注意点も存在している。
ということで今回は「経営理念は変更しても大丈夫?注意すべき点を徹底解説!」と題して記事をお届けする。
現在、経営理念の変更を検討していたり、余計な経営理念の変更を避けたいと考えていたりする経営者の方は、ぜひ参考にしていただきたい。
|そもそも経営理念は変更して大丈夫?
これは先ほど冒頭でも述べたが、経営理念は変更しても大丈夫だ。
だが当然、単なる気分転換や気まぐれで変更していいわけではない。
経営理念には、変更を考えるべきタイミングが存在している。
ということでここからは、経営理念の変更を考えるべきタイミングについて説明する。|経営理念の変更を考えるべきタイミングとは?
ここでは、経営理念の変更を考えるべきタイミングの例を4つ挙げていく。
みなさんの会社が次のような場合に当てはまっていないか、考えながらご覧いただきたい。
経営理念の変更を考えるべきタイミング①経営理念に納得が得られていない
経営理念は、企業の存在意義や価値観を示す指針であり、企業の行動や判断の基準となるものだ。
そのため、経営理念は企業にとって非常に重要な存在であり、社員、顧客、地域社会が共感できるものであることが望ましい。
しかし、経営理念を策定する際に、経営トップの意向のみが強く反映され、その他の立場の人の意見が十分に反映されなかった場合は、経営理念に納得が出来ないという状況が生じることがある。
経営理念の変更を考えるべきタイミング②経営環境の変化や経営方針の転換などによって、経営理念が対応できなくなった
経営理念は、企業の存在意義や価値観を示す指針であるため、長期的に機能するものであることが望ましい。
しかし、経営環境や経営方針は常に変化するものであり、経営理念もそれに応じて変化していく必要がある。
例えば、事業の拡大や新規事業の立ち上げなどによって、経営環境が大きく変化した場合、これまでの経営理念では対応できなくなる可能性がある。
経営理念の変更を考えるべきタイミング③社長が代替わりした
社長は、企業の経営方針や経営理念を決定する重要な役割を担っている。
そのため、社長の代替わりによって、経営方針や経営理念が大きく変わる可能性がある。
例えば、新しい社長が就任した際に、これまでの経営理念に違和感を感じたり、新しい経営方針を実現するために経営理念を変更する必要があると判断したりすることが考えられるだろう。
経営理念の変更を考えるべきタイミング④事業で成果が上がらない
経営理念は、企業の行動や判断の基準となるものだ。
そのため、経営理念が明確で、社員が共有できていれば、企業は同じ方向に向かって努力することができる。
ということはつまり、経営理念が不明確で、社員が共有できていない場合、目標に向かって努力することが難しくなる。
その結果として、事業で思うような成果が挙げられなかったり、挙げられなくなったりする可能性が考えられる。
以上が、経営理念の変更を考えるべきタイミングの例である。
何か思い当たる節があれば、みなさんの会社の経営理念も変更を検討する必要があるかもしれない。
|経営理念を変更するときに注意すべき点とは?
検討の結果、みなさんの会社の経営理念を変更することが決まったとしよう。
ここではそんなときに役に立つ、”経営理念を変更するときに注意すべき点”についてまとめていく。
経営理念を変更するときに注意すべき点①社員の理解と納得を得る
経営理念は、企業の全社員が共有すべきものだ。
そのため、経営理念を変更する際には、社員の理解と納得を得ることが重要である。
社員の理解と納得を得るためには、経営理念の変更の必要性や、変更後の経営理念の意味や意義を、社員に丁寧に説明することが欠かせない。
また、社員から意見や要望を募り、経営理念をより良いものにしていくことも、手段の1つとして考えられる。
経営理念を変更するときに注意すべき点②変更前の経営理念を尊重する
これは、社長の代替わりなどが理由で行われる経営理念の変更に関する注意点である。
それまでの経営理念は、企業の創業以来、大切に受け継がれてきたものだ。
そのため、変更前の経営理念には、企業の歴史や伝統が詰まっている。
ということは、それだけ変更前の経営理念に慣れ親しんでいる人も多いはずだ。
そういった人々の理解を得るためにも、「①社員の理解と納得を得る」でも取り上げたように、しっかりと変更の経緯を説明するのはもちろんのこと、変更前の経営理念をリスペクトする気持ちを忘れてはならない。
例えば、変更前の経営理念を全否定するような経営理念は、リスペクトに欠けているだろう。
経営理念を変更するときに注意すべき点③新しい経営理念を浸透させるための取り組みを行う
経営理念は、企業の存在意義や価値観を示す指針だ。
そのため、経営理念を社員が共有し、行動や判断の基準として活用することが重要である。
しかし、経営理念を変更したばかりの時は、社員は新しい経営理念を理解し、納得していない可能性がある。
そのため、新しい経営理念を浸透させるための取り組みを行うことで、社員が新しい経営理念を理解し、共有し、行動や判断の基準として活用できるようにすることが必要だ。
具体的には、下記のような取り組みが挙げられるだろう。
・経営理念の変更の目的や意義を社員に説明する
・新しい経営理念を社員に繰り返し伝える
・経営者自身が新しい経営理念を反映した行動をしたり、仕組みを取り入れたりする
すぐに変更が必要になりそうな経営理念の特徴とは?
社長の代替わりなどが行われる場合など、経営理念を変更せざるを得ない場合はもちろん存在する。
とは言え、始めに考えた経営理念の完成度が不十分であるが故の変更は、出来るだけ避けたいものだ。
そして、上記のような理由で変更が必要になりそうな経営理念のおおまかな特徴は、一言で言えば「刺さりにくい経営理念」であると言える。
刺さりにくい経営理念には、下記のような特徴がある。
・経営者だけが利益を求めにいっている
・経営者側の自己満足でしかない
・あまりにも抽象的すぎる
そしてこういった刺さりにくい経営理念には、すぐに変更しなければいけなくなること以外にも、たくさんの問題がある。
詳しくは下記の記事で解説しているので、合わせて御覧いただけるととても嬉しい。
>>刺さりにくい経営理念とは?共感される理念を作るポイントについて解説!
|実際に経営理念を変更した会社の事例
ここでは、実際に経営理念を変更した会社の事例を紹介する。
みなさんの会社も、経営理念を変更することがあれば、ぜひ参考にしてほしい。
本田技研工業株式会社の経営理念変更の例
現代では、車のメーカーとして名高いHonda(ホンダ)だが、正式な会社の名称を「本田技研工業株式会社」と言う。
そんな本田技研工業株式会社だが、1954年に本田宗一郎氏が述べ、1956年に社内報にて発表された「社是」と「わが社の運営方針」は、下記のようなものだった。
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社是
わが社は、世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた、廉價(廉価)な製品を生産する。わが社の発展を期することは、ひとり從業員と株主の幸福に寄與(寄与)するに止まらない。良い商品を供給することによって顧客に喜ばれ、関係諸会社の興隆に資し、さらに日本工業の技術水準を高め、もって社会に貢献することこそ、わが社存立の目的である。
わが社の運営方針
この目的実現のためには、会社はつねに次のような方針に則って運営されることが必要である。
一、常に夢と若さを保つこと
わが社は、世界の日進月歩の技術に伍して、日本の業界をリードしつつ、発展して行かなければならない。その道程に横たわる幾多の苦難と障碍(障害)を乗り越えてゆくためには、遠大な理想と不屈の若さが必要である。
二、理論とアイデアと時間を尊重すること
最高の製品は、最高の理論の上に立つ。優れたアイデアは、その理論を飛躍的に発展させる。理論を探究し、アイデアを尊重するところに、わが社の発展の基盤がある。どんなにすぐれた理論でも、すばらしいアイデアでも、それが必要な時に活用され、実現されなければなんらの価値もない。
経済も距離も時間におきかえられようとする現代においては、特にこの時間の観念を強調し、いわゆる時をかせぐことを忘れてはならない。
三、仕事を愛し、職場を明るくすること
働きよい職場で本当に仕事に情熱を打ち込むことのできることほど幸福なことはない。われわれはいつも相手の立場を尊重し、お互いの美点を認め合う気持をもつことが大切である。
職場は人格錬磨の場であり、人間完成のところでもある。真に自己の一生を託することのできる職場を作り上げることこそ全体の幸福を探求する道であり、そのためにこそみんなで協力し合ってゆかなければならない。
四、調和のとれた仕事の流れを作り上げること
優れた製品が作り出されるためには、あたかもオーケストラが素晴らしい音楽を奏でるように、人も機械もいろいろの設備も、あらゆる機能が一つの律動となって、流れるように躍動していなければならない。従業員の一人一人が生産から販売まで会社の大きな律動の中で、不可欠の部分を構成していることを自覚しつつ、すべての努力を組織を通じて綜合してゆく状態こそ、正に完成された職場の境地である。
五、不断の研究と努力を忘れないこと
世界の激しい市場競争の中にあって、わが社が確固たる地位を築き上げるためには、たゆみない研究と努力を一日もゆるがせにしてはならない。常に将来に備えて、現状に満足することなく積極的に改善に努めることが肝要である。ここに始めて作る者の喜びが生まれまた売る人の喜び、買う喜びが同時に実現できるのである。
引用元:本田技研工業株式会社の社内報
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この本田技研工業株式会社の経営理念の内の社是は、現在のものになるまで、実は2回も変化している。
その変化は下記のようなものである。
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社是【最初期】
わが社は、世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた、廉價(廉価)な製品を生産する。わが社の発展を期することは、ひとり從業員と株主の幸福に寄與(寄与)するに止まらない。良い商品を供給することによって顧客に喜ばれ、関係諸会社の興隆に資し、さらに日本工業の技術水準を高め、もって社会に貢献することこそ、わが社存立の目的である。
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社是【中期】
わが社は、世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた廉価な製品を生産する。
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社是【現在】
わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす。
引用元:©Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. (https://global.honda/jp/guide/?from=navi_header_drawer_global_jp)
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この社是の変化をまとめると次のようになるだろう。
①文章が簡潔になった
最初期の社是と現在の社是の2つを比べると、文章量が減り、簡潔で分かりやすくなったことが分かる。
こうすることで、社是を覚えてくれる人が増えるだろう。
②「廉価」が「適正な価格」に変わった
中期の社是と現在の社是の2つを比べると、「廉価」が「適正な価格」に変わったことが分かる。
「廉価」は、「安い」という意味だが、より分かりやすい表現に変えることで、経営理念がより理解されやすいものになったと言えるだろう。
③「世界的視野」が「地球的視野」に変わった
最初期・中期の社是と、現在の社是を比べると、「世界的視野」が「地球的視野」に変わったことが分かる。
これは筆者の予想になるが、人間の生活だけでなく、環境を大切にするという企業の価値観を示すために、「地球的視野」というワードに変えたのではなかろうか。
こうすることで、本田技研工業株式会社に新たな魅力を感じてくれる人が増えるだろう。
|この記事のまとめ
いかがだっただろうか?
今回は「経営理念は変更しても大丈夫?注意すべき点を徹底解説!」と題して記事をお届けした。
みなさんが今後経営理念を見直す際には、この記事でお伝えしたことをぜひ参考にして欲しい。
とは言え、いざ経営理念を変更するとなった際に、どのような経営理念にすれば良いか判断するのは、簡単なことではないだろう。
そんな答えのない問題を解決するお手伝いをするのが、我々マイビジョンである。
マイビジョンは経営理念はもちろん、ミッション・ビジョン・バリューの策定、評価制度の構築や採用ブランディングなどをオーダーメイドで行っている。
お悩みの方は、ぜひ弊社に相談して欲しい。