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BtoBブランディングの成功事例5選|効果的な進め方を解説
BtoB市場では、製品のスペックや価格だけで選ばれる時代から、企業としての信頼性や価値観が問われる時代へと移りつつあります。顧客との関係を深め、競合との差別化を図るうえで欠かせないのが「ブランディング」です。
BtoCに比べて注目されにくい分野ではありますが、ブランディングに成功したBtoB企業は、受注の安定化や採用力の向上など、明確な成果を上げている企業も少なくありません。本記事では、BtoBブランディングの基本や必要性、効果的な進め方、国内外の成功事例を交えてご紹介します。
BtoBブランディングとは?

BtoBブランディングとは、企業間取引で自社の価値や信頼性を顧客企業に伝え、長期的な関係構築を図るための戦略的な取り組みです。製品やサービスの性能・価格だけでなく、企業理念や専門性、組織文化などを含めた「企業としての総合的な魅力」を明確にし、顧客の意思決定に影響を与えることを目的とします。
BtoB市場では、導入までに関わる人数が多く、検討期間も長期にわたるため、企業としての姿勢や一貫性あるコミュニケーションが求められます。信頼できる企業と判断されるかどうかが、選定の大きな分かれ目になるため、「この会社と取引したい」と思われるブランド構築が欠かせません。
BtoBブランディングの重要性
BtoB市場では、製品や価格の優位性だけでは選ばれにくい時代背景もあり、信頼される企業としての姿勢や価値観を丁寧に伝えることが、長期的な取引や人材確保につながります。ここでは、BtoB企業がブランディングに取り組むべき主な理由を解説します。
競合他社と差別化できる
BtoB市場では、製品やサービスの性能や価格だけでは優位性を保つことが難しくなってきています。類似した商品やサービスが多く出回る中で、企業が選ばれる理由を明確に伝えるには、ブランドとしての「価値」や「姿勢」を打ち出す必要があります。
企業理念や提供価値、専門性や対応力などの無形の資産をわかりやすく整理し、ブランドを通じて発信することで、他社との違いが明確になるでしょう。このような差別化は、単なる機能的な比較にとどまらず、顧客の共感や信頼を呼び込むきっかけにもつながります。
顧客からの信頼とロイヤリティを高められる
BtoBでは、信頼関係の構築がビジネス継続の基盤となります。製品やサービスの質だけでなく、企業としての価値観や姿勢に共感してもらえるかがポイントです。ブランドが発信するメッセージや対応の一貫性は、顧客の安心感につながるでしょう。
一貫したブランド体験を提供することで、企業に対する信頼感が蓄積されます。結果として顧客のロイヤリティを高め、長期的な関係構築にも結び付き、顧客から選ばれ続けるための土台を築くことが可能です。
価格競争から抜け出せる
BtoB市場では、製品やサービスの価格が意思決定の大きな要素になることが少なくありません。しかし、価格だけで選ばれる状態では、他社との競争に陥りやすく、安定した収益を確保するのが難しくなってしまいます。
自社ならではの強みや理念を発信するなど、企業のブランド価値を明確に打ち出すことで、単なる価格比較の対象ではなく、信頼できるパートナーとして認識してもらえるようになります。
ブランドを通じて「この企業だからお願いしたい」と思ってもらえる関係を築ければ、価格が多少高くても納得して選んでもらえる可能性が高まるため、持続的に利益を確保するうえで欠かせない要素となるでしょう。
優秀な人材を惹きつけやすくなる
企業が持続的に成長していくためには、優れた人材の確保が大きな課題となります。近年では、給与や待遇だけでなく、企業のビジョンや文化、社会的な意義に共感できるかどうかが、求職者の選択基準として求められる傾向にあります。
そのため、BtoB企業であっても、自社の価値観や姿勢を明確に伝えるブランディングが大切です。事業の意義や将来の展望が社外に伝わっていれば、理念に共感する人材の関心を引きやすくなるでしょう。
マーケティング効果を高められる
BtoBブランディングは、マーケティング施策全体の成果を引き上げる力を持っています。ブランドとしての軸が定まっていれば、どのチャネルを通じても一貫性のある情報発信ができ、顧客の印象に残りやすくなるでしょう。
一貫性のあるメッセージは、広告やコンテンツの訴求力を高め、商談に至る前の段階で信頼感や親近感を育むきっかけになります。また、情報発信の際にブランドの世界観がしっかり表現されていれば、顧客にとって「この企業は何を大切にしているのか」が伝わりやすくなります。
BtoBブランディングを成功させるためのポイント

BtoBブランディングの効果を最大限に引き出すには、戦略的なアプローチが欠かせません。単発的な施策や流行に流されるだけでは、持続的な成果を期待することは難しいでしょう。ここでは、成功に導くために押さえておきたい基本的な考え方をご紹介していきます。
ターゲットが抱える課題やニーズを深く理解する
BtoBブランディングで大切なのは、単に自社の魅力をアピールすることではなく、相手企業が直面している課題や潜在的なニーズを的確に捉えることです。
BtoBの購買プロセスは複雑で、複数の部門や意思決定者が関与することが一般的です。そのため、一部の情報だけで判断するのではなく、業界特有の構造や相手企業の成長ステージ、市場環境なども踏まえた深い理解が求められます。
さらに、相手が求めているのは製品の性能だけでなく、「この企業となら長期的に信頼関係を築けそうだ」と感じられる安心感が欠かせません。そうした信頼を得るためには、的を射た提案や適切な情報提供を通じて、企業の課題に寄り添う姿勢を明確に示すことがポイントです。
一貫性のあるブランドメッセージを発信する
BtoBブランディングを成功させるうえで大切なのが、どのチャネルでも一貫したブランドメッセージを発信し続けることです。
顧客企業は、企業のWebサイトやSNS、営業資料、展示会など、さまざまな接点を通じて情報を得ます。その際、内容やトーンにばらつきがあると、ブランドに対する信頼を損なうおそれがあるので注意が必要でしょう。一貫性のあるメッセージは、企業の姿勢や価値観を明確に伝えるだけでなく、社内外の関係者に対しても強い印象を残します。
長期的な視点をもって継続的に取り組む
BtoBブランディングは、短期間で成果が表れる施策ではありません。企業の価値を浸透させ、信頼を得るまでには一定の時間がかかるため、長期的な視点を持ち、継続的に取り組む姿勢が大切です。
ブランディングの初期段階では、社内での認知度向上や情報発信の基盤づくりに時間を要する場合もありますが、それらの積み重ねが将来的な成果につながります。また、社会や市場環境の変化に応じてメッセージや施策の見直しが求められることもあるため、柔軟性と持続性の両立も必要となるでしょう。
目先の結果に焦るのではなく、企業としての方向性をぶらさずに進めることで、確かなブランドの土台が築かれていきます。
BtoBブランディングの効果的な進め方
BtoBブランディングを成功に導くためには、計画的かつ段階的なアプローチが求められます。ここでは、効果的なブランディングを進めるための6つのステップを解説していきます。
1.ブランドの軸を明確にする
BtoBブランディングの第一歩は、自社の「軸」を明確にすることです。この軸とは、企業が市場でどのような存在でありたいのか、どのような価値を提供できるのかなどの根本的な姿勢を指します。
ブランディングでの軸が不明確なままでは、施策が場当たり的になり、社内外に一貫したメッセージを伝えることが難しくなるでしょう。軸を固めるには、事業の成り立ちや背景、社会的な使命、今後の展望などの要素を洗い出し、自社らしさを言語化することが大切です。
2.目的とターゲットをはっきりさせる
BtoBブランディングを成功させるには、「何のためにブランドを構築するのか」等の目的を明確にすることが欠かせません。認知度を上げたいのか、営業活動を効率化したいのか、あるいは優秀な人材を惹きつけたいのかなど、目的によって、採用するべき戦略や訴求ポイントが大きく変わってきます。
また、誰に向けてターゲットにするのかの設定も大切です。BtoBでは、購買担当者だけでなく、経営者や現場の責任者も視野に入れた上で、それぞれの関心やニーズに合ったメッセージを届ける必要があります。
3.ブランドアイデンティティを構築する
ブランドアイデンティティとは、企業が顧客に対して伝えたい価値やメッセージの核となるものになります。企業として「どう見られたいか」「どのような存在でありたいか」など、企業の理想像を明確にし、そのイメージに一貫性をもたせることで、ブランドとしての信頼や共感が形成されていきます。
このステップでは、ロゴやキャッチコピー、ビジュアルデザインなどの表面的な要素だけでなく、企業の理念やビジョン、提供する価値までを含めた全体像を明確に言語化する必要があります。顧客との接点で一貫した印象を与えるには、こうしたブランドの根幹を社内外で明示しておかなければなりません。
4.自社ブランドの価値を社内全体に浸透させる
BtoBブランディングを成功させるためには、社外への発信だけでなく、社内への共有も欠かせません。ブランドの価値や方向性が社内で共有されていなければ、顧客対応や営業活動での一貫性が失われてしまう可能性があります。
ブランドの価値を社員一人ひとりが理解し、自らの行動に反映させることが求められます。そのためには、ミッション・ビジョン・バリューなどの基本方針を明確にし、日々の業務や評価制度などに反映させることが効果的です。共有の際には、単に情報を伝えるだけでなく、具体的な事例を交えながら説明することで、理解を深めやすくなるでしょう。
5.ブランディング施策の企画と実行
ブランドの軸やターゲット、ブランドアイデンティティが固まったら、それに基づいて具体的な施策を企画・実行していく段階に入ります。ここでは、自社の立ち位置や強みを踏まえ、どのようなアプローチが効果的かを見極めることがポイントです。
BtoBブランディングでは、SNSやオウンドメディアによる情報発信、専門メディアへの掲載、展示会やセミナーなどのリアルイベントを活用した取り組みが挙げられます。また、営業資料や自社Webサイトのトーン&マナーを整えることも一貫性のあるブランディングに欠かせません。
6.実施後の効果を測定し改善する
ブランディング施策を実行した後は、その成果を客観的に把握し、必要に応じて改善を図る段階へ進みます。ブランディングは感覚的な取り組みに見えがちですが、効果を測定することで次の施策につながる実践的な改善が可能です。
効果測定には、ブランドの認知度や好感度、問い合わせ数、営業への貢献度など、数値化できる指標を活用すると良いでしょう。SNSのエンゲージメント率やWebサイトの流入経路、問い合わせ件数なども有効な判断材料となります。
関連記事:自社のブランディングを行うときに最初に決めるのはビジョンではなかった!?企業ブランディングの具体的なやり方を紹介。
BtoBブランディングの成功事例5選

BtoBブランディングを効果的に進めるためには、他社の成功事例から学ぶことが大切です。ここでは、BtoBブランディングを成功させた5つの企業の事例をご紹介します。
1.IBMの「コグニティブ・コンピューティング」戦略
IBMは、自社の技術やサービスに「コグニティブ・コンピューティング」の明確な定義を与えることで、他社との差別化に成功しました。
この概念は、人間のように学習し、判断するシステムを表しており、従来のIT企業とは異なる独自性を演出しています。実際に人工知能「Watson」の展開でも、その思想が反映されており、革新性と技術力を訴求するブランディングにつながりました。
ブランドの軸を明確にし、製品やサービスに一貫性をもたせたことで、IBMは信頼と認知を強化した戦略として、BtoBブランディングの好例として挙げられるでしょう。
2.ドルビーラボラトリーズの「技術ブランディング」
ドルビーラボラトリーズは、音響技術に関するブランディングを行い、企業価値の向上に成功しました。同社は、ノイズリダクション技術をブランド化し、ライセンスを取得した企業の製品にロゴを表示できる仕組みを構築しています。
このロゴが付与されることで、製品の信頼性や高音質の象徴として認知されやすくなりました。また、ユーザーにとっても製品選びの基準となることが期待され、導入企業にとっては訴求力の強化につながります。
技術を視覚的に伝える施策により、双方にとってメリットのあるブランディングが実現されている点が印象的です。
3.TOTOの「技術ブランディング」
TOTOは、独自の技術を視覚的に伝えるブランディングによって、企業価値の向上を図ってきました。「ロゴが付与された製品は水滴がつきにくい」「汚れが落ちやすい」など、独自技術に視覚的な印象を抱くことで、品質への期待感を高めています。
節水技術の「トルネードフラッシュ」や、IoTを活用した成田空港のトイレ展示なども技術力を伝える手段として活用されました。日常生活に密接した製品だからこそ、技術へのイメージは大きな効果を発揮します。
4.株式会社タニタの「健康志向ブランディング」
株式会社タニタは「人々の健康づくりへの貢献」をテーマに、健康を軸としたブランディングを行っています。社員食堂のレシピを家庭でも再現できる書籍の出版や、実際に来店できる「タニタ食堂」の展開によって、生活者との接点を強化してきました。
これらの施策により、顧客にとって健康意識の高いブランドイメージが築かれたと考えられます。企業姿勢と製品特性をリンクさせた成功事例となります。
5.オムロンの「卓球ロボット『フォルフェウス』によるブランディング」
オムロンは、卓球ロボット「フォルフェウス」を通じてBtoBブランディングの差別化に成功しています。自社のコア技術を活かし、「人と機械の融和」というビジョンを視覚・体験を通じて訴求したことで、技術力を印象的に伝えることができました。
展示会でのデモンストレーションに加え、SNSやWebとの連携、インフルエンサーの活用など、統合的なコミュニケーション設計が高く評価されています。このようにオムロンの施策は、技術の見せ方次第でブランド認知を飛躍的に高められる好例です。
関連記事:ブランディングの成功事例10選|目的やマーケティングとの違いについても詳しく解説!
まとめ
BtoBブランディングは、差別化や信頼獲得、人材確保、価格競争からの脱却といった多くのメリットをもたらします。成功の鍵は、ブランドの軸やメッセージの一貫性、長期的な視点を持ち、顧客視点で継続的に取り組むことです。
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