リブランディングの進め方|成功事例とポイントを解説
近年、企業が持続的に成長を続けるためには、時代の変化に応じてブランドのあり方や全体像を見直す「リブランディング」が求められています。消費者の価値観は常に変化しており、同じ商品やサービスを提供していても、かつてのような評価や支持を得られないケースが増えてきました。
本記事では、リブランディングの基本的な理解から、適切なタイミング、実施方法、成功させるためのポイント、さらに実際の成功事例までを順を追って解説します。
リブランディングとは?

リブランディングとは、企業や商品のブランドを再構築し、新たな価値を伝えるための取り組みです。社会や市場の変化に対応する手段として活用され、ブランドの印象や方向性を見直すことで、顧客との関係性を再定義していきます。
見た目のデザインを変えるだけでなく、事業戦略や顧客体験、社内の意識など、ブランドに関わるさまざまな要素を幅広く見直す必要があります。適切に進めることで、新しい顧客との接点が生まれ、既存の顧客との関係もより深まるでしょう。
一方で、方向性を誤るとブランドの一貫性が損なわれ、信頼を失うおそれもあるため、目的を明確にし、段階的に進めていくことが大切です。
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リブランディングを検討すべきタイミング
変化の激しい時代では、ブランドのあり方も常にアップデートすることが求められます。これまで通りのやり方では通用しなくなったと感じたときこそ、リブランディングを検討する好機です。ここでは、検討すべき主なタイミングを具体的に紹介します。
市場環境や顧客ニーズが変化したとき
世の中の価値観やライフスタイルが変わると、顧客が求める商品やサービスの基準も大きく変わります。これまで支持を集めていたブランドでも、時代の流れに合わなければ徐々に関心が薄れていくでしょう。
そうした変化を感じ取ったときは、ブランドの見直しを通じて、新しいニーズに応える必要があります。顧客の声を分析し、何を期待されているのかを明らかにすることで、ブランドの方向性も自然と見えてきます。
競合他社との差別化が難しくなったとき
市場に同じような商品やサービスが溢れるなかで、自社の存在感を保つのは簡単ではありません。特に競合が増え、似たような訴求や価格帯で展開されている場合、従来のままでは選ばれにくくなっていきます。
こうした状況に陥ったとき、ブランドの個性や強みを再定義するリブランディングが効果を発揮します。他社と比較されやすい要素だけで勝負するのではなく、企業の理念やストーリーを明確に伝えることで、違いが際立ち、共感を得やすくなります。
企業のビジョンやミッションが変わったとき
事業の拡大や方針転換、新たな社会課題への対応などによって、企業が掲げるビジョンやミッションが見直されることがあります。このような変化が生じた場合、ブランドとの間にズレが生まれやすくなります。
以前のブランドが持つ印象やメッセージが、現在の目指す方向性と一致していない場合、そのままでは本来の価値が十分に伝わりません。むしろ誤解を招き、従業員や顧客の理解を得られにくくなる可能性があります。
ブランドが向かうべき方向と企業の未来像を一致させるために、リブランディングは有効です。新しい理念を視覚や言葉、体験を通じて具体化することで、社内外の共通認識が生まれ、企業活動全体に一貫性が出てきます。
新しい市場への参入、またはターゲット層を変更するとき
これまでとは異なる市場に参入しターゲットとする顧客層を見直す場合、従来のブランドのままでは伝わりにくいことがあります。求められる価値観や言葉、デザインの感覚が異なるため、意図しないギャップが生まれることも少なくありません。
新たな市場に適応し、自社の魅力を適切に伝えるためには、ブランド全体のトーンやメッセージを調整する必要があります。既存の良さを活かしながらも、新しい文脈でブランドを再定義することが求められるでしょう。
ブランドイメージが低下して売上が減少しているとき
商品やサービスに問題がないにもかかわらず、売上が落ち込んでいるときは、ブランドイメージが低下している可能性があります。顧客との接点である広告や接客、商品パッケージなどが時代遅れに感じられ、競合と比較されて魅力が薄れてしまうケースもあるので注意が必要です。
これらの状況を放置すると、顧客離れが進み、信頼の回復が難しくなるため、早めの対処が欠かせません。リブランディングを通じて、ブランドの見せ方や伝え方を再構築すれば、企業の姿勢や価値が再び伝わりやすくなります。
組織体制や組織構造が変化したとき
企業の成長や事業の再編に伴って、組織の体制や構造が変わることがあります。経営陣の交代、新たな部署の設立、合併・統合などが起きたとき、これまでのブランドイメージが現状と合わなくなることがあります。
適切なタイミングでブランドを見直すことは、社内外の信頼をつなぎ直す機会になります。新しい体制や方向性を反映したブランドに更新することで、従業員の意識も統一され、組織としての一体感が生まれるでしょう。
リブランディングの進め方

リブランディングは感覚的に進めるものではなく、段階ごとに明確な目的と手順を持って進行する必要があります。ここでは、リブランディングを成功させるための基本的なステップを紹介します。
1.現状分析
最初に行うべきは、自社のブランドがどのように認識されているか、どの部分に強みがあり、どこに課題があるのかなど、ブランドの現状を明らかにします。
顧客の声やレビュー、SNSでの反応、競合との比較など、多方面からの情報を集めることで、客観的な視点が得られます。また、社内のメンバーにヒアリングを行うことで、内側から見たブランドの姿も把握できるでしょう。
2.目標設定
リブランディングを成功に導くためには、何を実現したいのか等の明確な目標を定めることが欠かせません。ただブランドを刷新するのではなく、「売上回復を図る」「新規顧客層に認知される」「企業の方向性と整合性を取る」など、具体的な成果を見据えることが大切です。
目標が明確であれば、その後の意思決定にも一貫性が生まれます。また、プロジェクトに関わるメンバーの意識をそろえやすくなり、社内の協力体制も築きやすくなるでしょう。
3.ブランド戦略の再構築
目標を定めたあとは、それにふさわしいブランド戦略を再構築する段階に入ります。ここでは、企業が届けたい価値や、顧客にどう認識されたいかなどの「ブランドの核」を明確にすることが求められます。
ブランド戦略は、単にロゴやスローガンを作ることではありません。商品やサービスの提供方法、言葉の使い方、ビジュアルのトーンなど、すべての要素が整合性を持って機能する必要があります。誰に、どのような価値を、どのように伝えるかを総合的に設計していきます。
4.計画の立案
ブランド戦略を再構築した後は、取り組むべき施策とその順序、スケジュール、必要なリソースを整理し、具体的な計画を立て全体の流れを明確にしていきます。
リブランディングには多くの工程が含まれるため、場当たり的に進めると目的がぶれてしまうおそれがあるので注意しましょう。誰がどのタイミングで何を担当するのかを具体化することで、関係者全体の動きに統一感が生まれます。
5.策定の実行
計画の立案の後は、立てた計画に基づき、リブランディングの施策を具体的に実行する段階に入ります。ブランド戦略の内容を、実際のデザインやコピー、販促物、ウェブサイト、社内資料などに落とし込み、社内外に向けて順次展開していきます。
この過程では、計画通りに進行することが理想ですが、実際には現場での反応や予想外の課題が出てくることもあるため、都度状況に応じた柔軟な対応が必要になるでしょう。また、関係者との連携や情報共有を怠らず、一貫性のあるブランド体験を届けることも大切です。
6.効果測定とフィードバック
リブランディングは実行して終わりではありません。施策の結果を見極め、当初の目標にどの程度近づけたかを検証することが不可欠です。ブランドの浸透度や顧客の反応、売上や問い合わせ数の変化など、定量・定性的な視点で効果を測定していきます。
こうした測定結果を通じて、どの施策が効果的で、どこに改善の余地があるのかが明らかになります。社内外から寄せられるフィードバックにも耳を傾けることで、ブランドの方向性をさらにブラッシュアップするヒントが得られるかもしれません。
リブランディングを成功させるためのポイント
リブランディングは大がかりな取り組みであるだけに、進め方だけでなく「どうすれば成功に導けるか」等の視点も欠かせません。ここでは、実際にリブランディングを進めるうえで意識するべき大切なポイントを紹介します。
目的とビジョンを明確に設定する
リブランディングを始める際に最も大切なのは、「なぜ取り組むのか」「どこを目指すのか」を明確にすることです。目的やビジョンがあいまいなまま進めてしまうと、方向性にぶれがでて、一貫性のないブランドになってしまうリスクもあります。
目的とビジョンがはっきりしていれば、関係者の理解や協力を得やすくなり、すべての判断で共通の基準を持てるようになるでしょう。ブランドが目指す未来像を具体的に描くことが、全体の構成や表現に統一感を与えます。
データを分析し、課題を洗いだす
リブランディングを成功させるには、感覚に頼るのではなく、客観的なデータを活用する姿勢が欠かせません。現状のブランドが市場でどのように受け止められているのかを数値で把握することで、的確な課題設定につながります。
アンケート調査やSNSの声、サイトのアクセス傾向、売上推移など、さまざまな角度から情報を集めることで、表面的には見えなかった問題が浮き彫りになります。顧客がどこに不満を感じ、何を期待しているのかを知ることが、リブランディングの方向性を決める材料になるでしょう。
これまでに築いた信頼と強みを守りながらアップデートする
リブランディングでは新しさを追求するあまり、これまでの実績や顧客との信頼関係をないがしろにしてしまう恐れもあります。しかし、ブランドが長年かけて築いてきた信頼や強みは、大きな資産であり、むやみに捨てるべきものではありません。
変えるべき点と守るべき点を見極め、長く支持されてきた価値やサービスの本質を活かしながら、新しいデザインやメッセージで今の時代に合う表現へとアップデートすることで、既存顧客の離反を防ぎつつ、新しい層にも訴求できます。
長期的な視点で計画を立てる
リブランディングは短期間で成果が見えるとは限らず、継続的な取り組みとして捉えることが必要です。ブランドの印象や価値は、時間をかけて徐々に浸透していくものであり、急激な変化だけで顧客の理解を得ることは難しい場面もあります。
そのため、リブランディングは一度限りのプロジェクトではなく、中長期的な視点で育てていくものと考えるべきです。ブランドをどう成長させ、どのように定着させていくか等のロードマップを描いておくことで、軸のぶれを防ぎながら取り組むことができるでしょう。
リブランディングの成功事例3選

実際にリブランディングに取り組み、成果を上げた企業の事例からは多くの学びがあります。ここでは、異なる業界で成功した3社の取り組みを紹介し、具体的な工夫や戦略を紐解いていきます。
湖池屋|高級路線への転換
1953年創業の湖池屋は、老舗のポテトチップスメーカーとして知られてきましたが、市場の縮小や価格競争の激化により、ブランドイメージの固定化と売上の停滞に直面していました。これを打開するため、「老舗の本気」を掲げ、全面的なリブランディングに取り組んでいきます。
企業ロゴを「家紋」を模したものに刷新し、ブランドブックを社員全員に配布することで、インナーブランディングとともに、社屋も一新しました。さらに、国産素材にこだわり、製法やパッケージまで洗練された新商品「KOIKEYA PRIDE POTATO」を開発し、スナック菓子にプレミアム価値を付与することで、幅広い層から支持を獲得しました。
ブランドの再構築を通じて、社内外に共通の価値観を浸透させた湖池屋の事例は、伝統企業の挑戦の好例になります。
オルビス|ブランド価値の再定義による売上向上
スキンケアブランドとして知られるオルビスは、ブランドイメージの刷新を通じて、新たな顧客層の獲得と売上の向上に成功しました。従来は無油分・無香料の機能性を重視した「オイルカット」の印象が強かったオルビスですが、時代の変化とともに顧客のニーズも多様化し、ブランドが持つ印象にギャップが生まれていました。
そこでオルビスは、2018年よりリブランディングを開始し、「肌が本来持つ力を信じて引き出す」思想を軸に商品やブランドの世界観を再構築しました。
代表商品「オルビスユー」は発売2カ月で67万個を突破し、続く「ディフェンセラ」も大ヒット。創業時の価値観に立ち返りつつ、現代ニーズに応じた再定義によって、顧客からの支持と売上の両方を獲得しました。
スターバックス|ブランドロゴの刷新と事業領域の拡大
スターバックスは2011年、創業40周年を機にロゴから社名を外し、サイレンのアイコンのみのミニマルデザインに刷新しました。この変更は、コーヒーに限らない事業拡大やグローバル展開を見据えたものです。
文字に頼らず認識されるロゴへと進化し、ブランド力の高さを印象づけました。統一感あるビジュアルが、世界中での展開と新たな顧客層の獲得に貢献しています。
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まとめ
リブランディングは、企業が市場の変化や顧客ニーズに対応し、ブランド価値を再構築する大切な戦略です。成功には、現状分析、明確な目標設定、戦略の再構築、計画的な実行、効果測定が不可欠になります。
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